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84:懐かしい旅の思い出

 食卓に咲く色とりどりの花のような食事たち。

 それを片っ端から喰らい尽くす勢いで、ダームは思い切り頬張っていた。


「美味しい!」


 肉やパン、野菜に見たこともないスープ……。

 旅先で自分や戦士が作った料理ももちろん美味しかったが、これは最高だ。


 舌がとろけてしまいそう。彼女の食べる勢いは緩まることなく、増すばかりだった。


 クリーガァとカレジャスは食べ比べを始めている。ダームも負けじと肉に食らいついた。


「ダーム殿。もう少し落ち着いて食べませんと、せっかくのドレスに汁が跳ねてしまいますよ」


「大丈夫大丈夫! 今夜は勇者一行の勝利を祝して、でしょ? 気にせずどんどん食べちゃおうよ」


 そう言う彼女の横で、メンヒは深く吐息を漏らした。


「僕たちは、本当に魔王を討ち滅ぼしたんですね」


「――? そうだけど、どうかしたの?」


 首を傾げるダームに、彼はゆっくりかぶりを振った。


「いえ、まるで夢のようだな、と思いまして。……嬉しいのです」


 ダームにはあまり自覚がないのだが、とにかくそれは偉業である。

 メンヒは当然のように、そんなことを果たせないと思っていなかったらしい。


「そうだね。あたしも、魔法使いになって魔王を倒すなんて、夢にも思わなかったなあ」


 王子に追放された時、全てが終わりだと思った。

 もう未来なんてないのだと、絶望しかけて。恨みだけに胸を焼き焦がして。


 だから、ここまで辿り着けたことはすごいと思う。


「でもきっと、これが運命だったんだよ」


「そうですね」


 それからダームたち二人は、思い出話で盛り上がった。


「あたしと初めて出会った時、僧侶くん驚いてたよね」


「ええ、まさかカレジャス殿が森からあなたを連れてくるとは思っていませんでしたからね」


「だよねー。泥まみれで汚かったし、出会いとしては最悪だったよ」


 しかし、現に泥まみれの出会いから色々な経験を重ね、今ここまでに至っている。

 そう思うと感慨深かった。


「色々、本当に色々あったけど、あたしは勇者様に、戦士さんに、僧侶くんに会えてよかった。心から、そう思ってる」


「僕もですよ、ダーム殿。


 二人の少年少女はそう言って、そっと微笑み合った。


 そこへ、意外にも食べ比べで負けたらしいクリーガァが参戦してきて、さらに話は盛り上がりを見せ出すのだった。


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