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83:晩餐会の始まり

 黒いワンピースに着替えたダームは、金色のツインテールを跳ねさせながら部屋を飛び出した。


 おめかしに時間をかけすぎたせいで晩餐会に間に合わなくなってしまう。その時、うっかり誰かとぶつかってしまった。


「きゃっ」悲鳴をあげて倒れ込む。

 すぐさま顔を上げると、そこに巨体が立っていた。どうやらクリーガァとぶつかってしまったらしい。


「あっ、ごめんね戦士さん」


「急に出てくるのは感心しないな! そこまで急がずとも晩餐会には間に合う! 一緒に行こう!」


「うん」


 ダームとクリーガァは、横並びで廊下を歩き出した。


「――そういえば戦士さんと二人きりになる機会なんて、そんなに多くなかったなあ」


 口の中だけで呟き、思い出すのは旅の途中のこと。

 料理を教えてもらったり、色々した。けれど実際、彼としっかり話せたことは片手の指で数えられるほどしかない。


 なんだかせっかくだし、話したくなった。


「戦士さんって、勇者様がこの国の皇子だってことは知ってたの?」


「もちろんだとも! 旅立ちの以前から、私とカレジャスくんは城で一緒にいたな!」


 意外に彼等の付き合いは長いらしい。

「十年くらいにはなるな!」という戦士の言葉に、ギョッとせざるを得なかった。


 クリーガァの年齢は推定三十歳。そしてカレジャスは二十三、四歳と言ったところだろう。

 互いが青年・少年時代から傍にいたのだとしたら、あの妙に親しい距離感にも頷ける。


「そっか。勇者様と戦士さん、仲良いもんね」


「いいや、そうとも言えない! 成り上がりの私に対して最初から地位のあるカレジャスくんを、妬んでしまったこともある! 彼の方も、愚民のくせに出しゃばる私を鬱陶しく思ったりもしたのだろう!」


「そうなんだ。でもあたしには、なんだかんだ言って二人は親友だと思うよ。あっ、そうだ。僧侶くんとはいつ出会ったの?」


「一年ほど前、帝城へふらりと現れた僧侶、それがメンヒくんだよ! そしてあっという間に周囲の信頼を勝ち取って、勇者パーティーに含められるほどの人材になったと言うわけだ!」


「へえ〜、すごいね!」


 クリーガァの話に相槌を打ちながら、思い浮かべるのは恋しい二人の顔。

 それぞれに優しくて、それぞれにダームを好きでいてくれる。けれど……。


 そこまで考えた時、戦士の「着いたようだな!」という声で我に返った。


「えっ、もう?」


 見ると、銀縁の大きな扉の前に数人の兵士が立っている。


「中へどうぞ。皇帝陛下がお待ちです」


「了解だ!」

「楽しみ〜」


 彼らの言葉に従い、ダームたちは扉を開けて食堂へ足を踏み入れた。



* * * * * * * * * * * * * * *



 食堂にはすでに、カレジャスとメンヒがいた。


「ダーム殿、クリーガァ殿、お待ちしておりました」


「遅えぞ。もしかしてクリーガァと無駄話でもしてたんじゃねえだろうな?」


 二人の視線を受け、「お待たせー」と言いいながら着席しようとしたダームは、違和感に気づく。


 改めてカレジャスを見て、「あっ」と声を漏らす。

 よく見ると、彼の服装がいつもと違うのだ。


 盾や腰の剣は外され、兜が脱ぎとられて長い赤毛がさらけ出されている。

 いつもの重々しい鎧の代わりには、簡単な礼服を着ていた。


「ジロジロ見て何だよ。この服が変だってのか? こんな服、俺も今すぐ脱いでやりてえぐらいだよ」


「ううん。勇者様、それとっても似合ってるよ! それにやっぱり赤い御髪が美しい……」


 全身の装備を剥いだカレジャスを見るのなんて初めてだったから、ダームは大興奮だ。

 今までカレジャスは、就寝の際も鎧を着ていたっけ。よくよく考えてみれば変な話だが、常に警戒するためかも知れない。


「カレジャスくん、そう不満がるのはいかがなものか! 美男は服装などお構いなしに輝いているものだ! 私のようにな!」


「お前はほとんど裸だろうがよ。ったく」


 確かに、クリーガァは半ズボンを履いているだけで、上半身はムキムキの体を露出している。半裸というやつだ。


「美男は裸でも輝くものだよ!」


「戦士さんは美男じゃな……なんでもないなんでもない」


 うっかり口を滑らしそうになり、慌てて口を押さえるダーム。


 メンヒは彼らのやり取りを見て、くすくす笑っていた。


 ……と、服装の話はここまでにしよう。


「先に入っておったか。余を全員で迎え入れるとは、大義である」


「やっと来たか。ただでさえ遅えこいつらよりさらに遅えってどんだけ遅えんだよ」


「遅い遅い言うでないわ。早速、晩餐会を開くとする」


 さすが皇帝、威厳がある。

 ちょうどお腹が減ってきた頃なので、皆、晩餐会と聞いて目の色を変えた。


 食欲をそそる香りがして、食事が次々と運び込まれ長机に並べられていく。


 こうして、晩餐会が幕を開けた。


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