表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/100

82:ご褒美は?

 カレジャスがこの国の皇子だったなんて、寝耳に水にもほどがあった。

 今までダームは、彼をただの勇者としてしか認識していなかった。いや、皇子だとわかる人間はきっといないだろう。


 言動からは言っては悪いが気品は感じられないのだ。でも考えてみれば、彼の出身が不明であったことを今思い出した。

 それに、皇帝と目と髪の色が同じだ。間違いない。


「えぇぇ……」


 最初のショックが収まると、ダームはカレジャスの頬に一発平手打ちをかます。


「痛ぇ」と心外そうな目を向けてくる彼に、ダームは腰に手を当てて怒る。


「大事なことはちゃんと言わなきゃダメでしょ。あたし、そんなことも知らされないでいたなんて……」


「悪い悪い。完全なポカだよ」


 全く悪びれないカレジャスを見て、ダームは半ば諦めた。


「もぅっ、ポカで済ませないでよね! ええと、なんて呼んだらいい? 皇子様って言った方がよかったり?」


「いや、今までのでいい。皇子って呼ばれるのはあんまり好きじゃねえんだ」


「了解。ほんとに勇者様は勝手なんだから」


 クリーガァ、メンヒ、皇帝はそれぞれ生暖かい目でそのやり取りを眺めていた。



* * * * * * * * * * * * * * *



 そんなこんなありつつも、カレジャスから皇帝への旅の話は無事に済んだ。


「ご苦労。様々なことがあったのだな」


「そりゃあ当然。何度も何度も死にかけたんだ、せめて褒美くらいくれるよな?」


「無論だ」


 褒美。

 その言葉を聞いて、ダームの胸がまた高鳴った。


「僧侶くん、ご褒美は何か知ってる?」


 そっと耳打ちしたが、どうやらメンヒも知らないらしく首を振る。

 完全なるサプライズ、そのご褒美とは?


「余に与えられるものは少ない。よって、褒美は「この場の全員の帝国での自由な暮らし』を確約すること、とする」


 一瞬、場が静まった。

 てっきり豪華な金銀財宝でももらえるのかと思っていたダームたちは、なんというか、耳を疑ったわけである。

 もちろん贅沢を言ってはいけないが、


「あんまりにもしょぼすぎるだろ、それ」


 カレジャスの言葉が、この場の者たちの総意だったに違いない。


 でも皇帝はかぶりを振った。


「考えてもみよ。この国、いや世界を救った英雄たるそなたらは、帝国での安寧を築ける。この先どうやって生きていくのかはそなたら次第だが、帝国はそなたらのいかなる要望も受け入れようというのだ。悪くはあるまい?」


 つまり何かと援助してくれるということだ。


「まあ確かに、しょぼくはあるけど悪くはないかも」


「なら、私も賛成だな!」


 ダームとクリーガァはそれぞれ納得し、カレジャスは仕方ないかという風に肩をすくめる。

 そしてメンヒが皇帝へと頭を垂れた。


「皇帝殿、ありがたく受け取らせて頂きます」


「そうするがいい」


 そうしてなんだか実感のないご褒美をもらったあと、一同は帝王の間を出ることに。


 城の使用人に「晩餐会までの時間、おめかしをなさってください」との言葉を受け、ダームたちはそれぞれあてがわれた部屋へと入った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ