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81:皇帝とのご対面

 短い赤髪に立派な赤い髭の、背の高い男性だった。

 彼は玉座などには座らず、姿勢正しく立って佇んでいる。そして威圧的な青の瞳でこちらを見下ろしていた。


「長旅、ご苦労であった。無事旅の目的を果たせたのだな?」


「そうに決まってんだろ。魔王なんかぶっ倒してやったぜ」


 皇帝相手だというのに、カレジャスはいつもと変わらぬ態度――いや、むしろ自慢するように笑う。

 まあ当然か。彼はこれからきっと、世界を救った英雄と呼ばれるようになるのだから。


「大義であった。して、そこの娘は」


 まっすぐ指を指され、ダームはやや狼狽える。しかし気をしっかり持つことにした。


「皇帝様初めまして。あたしは魔法使いにして西の王国の公爵令嬢、ダーム・コールマン。勇者様のお供をしてきたんだ」


「ほぅ」と皇帝が唸った。


「魔法使いとな。てっきり大魔術師マーゴがその役目を負うかと考えておったが、このような娘が果たすとは。世の中、余に予測できないこともあるものだ」


 褒められて、ダームはもうハイテンション。今すぐにでも飛び跳ねたい気分だ。


「さて旅の話を聞こうではないか。カレジャス、頼む」


「めんどくせえな。メンヒにでも任せた方がいいだろ」


 腕組みする勇者は、皇帝の言葉が気に入らない様子。

 そんな彼を見て、皇帝は大きくため息を漏らした。


「すぐに人に押し付けようとする。それでは、我が息子とは認められぬぞ」


「へいへい。じゃあ……」


 仕方なし、といった風に説明を始めようとしたカレジャスを大慌てで止めたのはダームだった。


「ちょ、ちょっと待って!」


「どうしたよ?」


 カレジャスが不審げな顔を向けてくる。しかし、不可解なのはこちらの方だ。


「今、皇帝様が勇者様のこと、息子って言ってなかった? 何? あたしの聞き間違い?」


 戦士も僧侶も当たり前のような顔をしていたが、ダームにとっては寝耳に水。勘違いか何かかと思ったが、


「ああ、言ってなかったっけか? 俺はこの帝国の第五皇子だよ。まあ、ほとんど皇子としてはおまけ中のおまけだがな」


「へ?」と思わず声が出た。


 クリーガァは苦笑いし、メンヒは驚いて目を丸くする。

 一斉に一同の視線を浴びたカレジャスは、舌を出して気まずそうにしていた。


「そんなの聞いてない! なんでもっと早く言ってくれなかったの! 勇者様の馬鹿ぁ!」


 そして次の瞬間、ダームの叫びが帝王の間に木霊したのだった。


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