80:帝城
赤い幕で覆われた、雲を突くような大きな城を目の前にしていた。
その周辺ではあちらこちらで人が行き交い、にぎやかな様子を見せている。
「これが帝城? すごーい!」
「ああ。懐かしいな」
カレジャスがなんだか感慨深そうに呟いた。
「ここへ戻ってくるのはザッと半年ぶりってとこか? 思ったより短いような気もするけど、長かったような気もするよな」
「そうだな! しかも、全員が生きて帰れるなどとは思ってもみなかった!」
「しかもダーム殿まで連れているなんて、旅立ちの時には予想もしませんでしたね」
どうやらダーム以外の三人は、帝城から出発した模様。
きっと出発の儀式などが色々あって、たくさんの声援を受けたのであろう。その様子を想像し少し羨ましくなったが、ダームはそんなことを考えても仕方ないと首を振った。
「ねえねえ、早く入ろうよ」
「そうだな。じゃあ、行くか」
勇者を先頭に、一行は城門へと歩き出した。
そして門番の男に話しかける。
「よぅ。戻ってきてやったぜ」
「…………!? か、カレジャス様、お戻りになったのですか!?」
「だからそうだってさっき言っただろ。早く開けろ」
「はいぃぃぃぃぃっ」変な悲鳴を上げながら、男が慌てて門を開ける。
それに対してカレジャスは至って冷静に城の中へ入っていった。
「僕たちも行きましょうか」
「うん」
彼の後を追い、横並びになって門を潜り抜けるダームとメンヒ。そのさらに後にクリーガァが続く。
ダームは、初めての帝城に足を踏み入れた。
* * * * * * * * * * * * * * *
帝城はダームがよく知る王城と大きく違っていた。
まず一つは飾り気がないこと。
そして、あちらこちらに監視の目が光っていることだ。兵士が見当たらない場所がないと言って過言ではないだろう。
そんな厳重な中を歩き、向かうは帝王の間だ。そこに、目的の皇帝はいる。
「皇帝ってどんな人か、勇者様は知ってる?」
「ああ、嫌ってくらいに知ってるぜ。やたらとルールに厳しいし、本気で勝負したら俺もひたすらに苦戦する。それぐらい手強いやつだよ」
カレジャスといい勝負をするとは、なかなかな強者なんだなとダームは驚いた。
「それでそれで?」
「――さあ、着いたぜ。後のことは本人を見たらわかるぜ」
気づいたら、いつの間にか扉の前まで歩いてきていた。
まだ扉越しだというのに、ピリピリと肌に強い気配を感じる。きっと皇帝はこの中に違いなかった。
「うん、じゃあいよいよ皇帝様とご対面だね」
カレジャスによって扉がそっと開かれる。その瞬間、低く威厳のある声がした。
「ただ今帰ったか、旅の者たちよ」




