77:ポンコツ大魔王をやっつけろ!①
すっかりいちゃついてしまったが、今もクリーガァとメンヒが魔王と激戦を繰り広げている最中だ。
早く加勢しなければと、ダームたちは立ち上がった。
カレジャスはクリーガァの方へ走り、ダームは戦いを少し離れたところで見守るメンヒのところへ。
「お待たせ僧侶くん」
「ダーム殿。魔力消費の具合はどうですか?」
そう問われ、ダームは答える。
「Ω級魔法を三つぶっ放したからかなり激しいけど、魔力をなるべく抑えたしまだ戦えるかな」
「助かります」
一方勇者と戦士を見やると、
「我が手下を殺してくれたであるな。あやつは有能であったのに許さないのである!」
「逆恨みされては困るな! 先に襲いかかったのは彼の方ではないだろうか!」
「魔王は黙りやがれ。とっとと沈黙するのがお似合いだぜ化け物」
罵り合いながら剣や拳が乱舞し、対して魔王の闇の球が彼らを狙う。
魔王の体がやたらに大きいせいですばしっこい動きはされないで済んでいるが、だからといって優勢というほどでもなかった。
「あたしも加勢してくる。僧侶くんはあたしたちの勝利を祈ってて」
「もちろんです」
背後の僧侶へ微笑み、魔法使いの少女は戦場へ飛び出した。
* * * * * * * * * * * * * * *
「『ファイアーβ』、もういっちょ『ファイアーΓ』!」
大小の火球を掌から放ち、魔王の闇球を撃ち落とすダーム。
その間にカレジャスたちが攻撃を繰り出し、魔王に詰め寄っていく。
「な、何たることであるか! 我の自慢の魔球を砕くとは……」
その時だった。
狼狽える魔王の前、勇者の伝説の剣から閃光がほとばしり、あたりを明るく照らしながら魔王へと発射される。
避け切れなかった魔王の腕がちぎれ飛んだ。
「ぎにゃぁぁぁぁぁっ!」
すごい悲鳴を上げる魔王。今にも泣きそうなその顔は少しだけ見物だった。
「よくもよくもよくもぉっ」
ドス黒い血が飛び散る中叫んだ魔王の体が変色する。
漆黒の巨体を赤色に染めた魔王は、突如、すっかり冷静さを取り戻した。
「本気の我に勝てると思うなである。この特大魔球を受けてみよ」
ゴワゴワした毛の生えた手から黒い靄が生み出される。そしてそれはすぐ球状になり、膨れ上がっていく。
「勇者様、危ないっ」
ダームは咄嗟に一番前に出ていたカレジャスを突き飛ばし、ずっこける。
が、それに構わず氷の壁を何層も展開した。
そしてそのまま闇の球が降り注ぎ――。




