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74/100

74:仕切り直し

 カレジャスは溢れた涙を床に顔を擦り付けて拭う。

 心から本当に嬉しい。もう会えないと、そう思っていたから。


「ダーム」


 口の中だけで彼女の名前を呼ぶ。

 そして顔をあげ、少女の輝かしい笑顔を見た。


「来てくれた……のかよ」


「当たり前じゃない」と魔法使いの少女は言った。


「まったく、勇者様は仕方ない人なんだから」


 ――ああ、可愛いな。


 カレジャスは場違いな感情を抱いたのだった。



* * * * * * * * * * * * * * *



「来てくれた……のかよ」


 こちらを見上げるカレジャスの問いに、ダームはこくりと頷いた。


「当たり前じゃない。まったく、勇者様は仕のない人なんだから」


 本当に、無事でよかった。

 そう思いながら彼女は、こうしてはいられないと魔物たちの方へ向き直った。


 二つの影がある。

 一つは、ツノが生えた黒い大岩のような化け物。あれが魔王だろうとすぐピンときた。そして――。


「……っ」


 驚きに声を失った。


 美しい白髪、灰色の瞳。

 そこに立っていたのは、見慣れた憎き男の姿。

 ついこの前復讐を果たし、二度と会うことがないと思っていた青年。彼が、目の前にいる。


「あなたがどうしてここにいるんです」


 カレジャスの拘束を解いていたメンヒが、珍しく厳しい声を上げる。


「私のことか? 話せば長くなる、死にゆく君たちに私の言葉を与えてやる必要もない」


「そうですか。それは失礼」


 僧侶はこれ以上の会話を諦めたようだった。


 ダームの胸の中で、何かムラムラした感情が膨らみ出す。

 しかし彼女はそれを振り払うように明るい声で言った。


「よし、仕切り直しだよ! 戦士さんは魔王の方をお願い、腹黒王子はあたしに任せて!」


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