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71/100

71:腹黒王子

 魔王の手から姫を奪い取る。少女の体が、カレジャスの胸に収まった。


 雷の光が消えていく。

 その中でカレジャスは、少女を抱えたままで言った。


「大丈夫か?」


「ええ、大丈夫ですわー。助けて頂きありがとうございまーす」


「いやに気に触る口調だなおい。ちっ」


 本当に姫なのか? などと思いつつ、姫を胸の中から離すと、黒い穴の方を指差した。


「お前はここを潜って外で待ってろ」


「でも〜、外には悪魔ちゃんがいますわー。とっても出ていける状況じゃないぞ」


「今一瞬変な喋り方しなかったか?」


「気のせいですわー」


 そんなやりとりをしつつ周囲を警戒。

 確かに外は悪魔だらけだろう。これだけ騒ぎになっているなら当然だ。

 ではどこに姫を隠したら。


 ――その時だった。


「油断したな」


 ぎゅっと、体が縛りつけられるような衝撃が走った。

 驚き、自分の手腕を見たカレジャスは「あっ」となる。そこに黒い『何か』が巻きついていたのだ。


 そしてそれをやらかしたのは――。


「ふ、ふは、は、ふははははははは」


 悪役の三流芝居のように嗤う姫であった。


「お前、何しやがる!」


「闇魔法の『蛇縛り』だ。これなら勇者にも解けないだろう?」


 すっかり口調が豹変している。そして、女の裏返った声が、男の野太い声になっていた。


「誰だお前。魔王とグルか!」


「そんなことも気づけないとは、やはり馬鹿なのか。まあ、所詮は愚民なのだから当然だがな。……私はプリンツ。名に聞き覚えがあるだろう?」


 言われて、思い出した。

 確かにこの声は初めて聞いたのではない。伝説の鎧を手に入れた西の王国の王城、あそこでニヤニヤしていた王子のものだ。

 ……結局ダームに腹黒を暴かれ、処刑となったはずだが。


「どうして、という顔をしているな。なんら不思議なことはない、私は国外追放をされた。それもこれも、あんな馬鹿女のせいだ。そしてうっかり大穴に落ち、魔王様に助けられた」


 馬鹿女というのは、きっとダームのことだろう。そう思うと腑が煮え繰り返る。


「ダームのことを悪く言うな」


「へえ。もしかして君はあの女に惚れているのかい? ならやめておいた方がいいと忠告しておこう。彼女はふしだらな女なのでね」


「ふざけるな! ふざけるなよ!」


 そう叫んで、縛られた手腕などそっちのけで王子の方へ走り出す。

 しかし、途中で勢いよく転んでしまった。……足を黒蛇魔法で拘束されたのだ。


「てめえ!」


「いい気味だ。陥れられた地獄、味わうといい」


 にやりと笑い、王子が女装を剥がす。

 若白髪が顕になり美男子の顔が曝け出された。

 そしてゆっくりとこちらへ歩いて来る。一歩、一歩、また一歩と。

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