57:呪われた勇者様
目を開けていられないほどの眩い光が辺りを包む。
「……え?」
理解が追いつかず、ダームの口から声が漏れる。
しかしまもなく光が消えて視界は晴れた
一体何が起こったのかと、守り人以外のこの場の全員が思ったことだろう。
先ほどのギャップで急に暗くなったので目がチカチカした。それがやっと治った時、一同は気がつく。
――銅の剣を手にした勇者が、地面に倒れ伏していることに。
「勇者様!」
叫び、魔法使いは倒れる青年の方へ駆け寄った。
カレジャスは苦しげに呻いている。「うぅ」とか「あぁっ」とか、まるで内側から何かの病で侵されているかのようだ。
「僧侶くん、今すぐ来て!」
「わかっています。カレジャス殿! どうなさったのですか?」
メンヒもカレジャスの傍へやって来て、彼の体を揺する。すぐに治癒魔法をかけ始めた。
……が、直後戦士が叫んだと同時に、状況は一変する。
「ダーム嬢! メンヒくん! 彼から離れろ!」
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
急に目の前の勇者が飛び起き、獣のような咆哮を上げた。
その様子に身を固くするダーム。だが、彼女の手を誰かが掴み、引きずった。
「きゃあっ」
「大丈夫だダーム嬢! 私だ!」
可愛く悲鳴を漏らすダームのすぐ前、よく見るとそこにクリーガァの顔があった。
恐ろしい化け物に引き倒されたわけではないとわかって安心。しかし、そうも言ってはいられない。
「ちょ、ちょっと待って、戦士さんこの状況は一体!?」
「私にもわからない! が、カレジャスくんの様子がおかしい!」
そこへ獣の如く唸りながら突進してくるカレジャス。戦士クリーガァは魔法使いと僧侶の体を両腕に抱えたままでそれをひらりと交わした。
と同時に、遠くから剣の守り人の声が聞こえてきた。
「その男は選択を誤った。銅色の剣、それは呪いの剣だ。よって、理性を失った獣と化した。貴様らが三人がかりで打ち倒すまでそやつは暴れ続けるであろう」
彼女の言ったことに、ダームは驚くしかない。
「理性を失くした獣って……。つまり、勇者様はあたしたちを襲う敵になっちゃったってこと?」
「どうやらそのようですね。カレジャス殿は剣の影響で我を忘れられているようです」
……三つ目の試練、それに失敗したカレジャス。
呪われた彼をなんとか元に戻さねばならない。それがダームたちの役割のようだった。
その時またも勇者の体をした野獣が突っ込んできた。




