表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/100

55:魔法使いは万能万能!

 最初からΩ級魔法を使うと、体力の消費が激しいので普通はしない。

 しかしダームはこの作戦を選んだ。なぜって、戦場の範囲を狭くしなくてはならないから。


 炎はエペ目がけてでなく、周囲の草むらへ引火。彼女たち二人を囲む地面が、ぼぅっと燃え上がる。

 それと同時にエペから攻撃が飛んでくるが、ひらりと身をかわした。それでも剣のように細い体をくるりとこちらへ向けて、エペが追ってくる。


「貴様、奇怪な戦術を思いつくな。女とは思えない」


「いいや、逆に女だからこそかもね! 『ウインドΓ 浮遊』っ!」


 胸へ届きそうな剣先を避け、同時に魔法を詠唱。

 ふわりと体が宙に浮き、ずっと高くまで登って行った。


「何っ。それはルール違反ではないのか?」


「ルールは一対一だけだよ? あたしは逃げたんじゃない。ここから攻撃を仕掛けるの」


 眼下には輪状に燃え上がる炎と、その中心でこちらを見上げる銀髪剣士の姿。

 彼女がどれだけ剣が強かろうと、空中に浮くこちらには勝てまい。ダームは次々と攻撃を放った。


「どんどん行くよ! 『ファイアーβ』、『アイスΓ』、もういっちょ『ファイアーΓ』!」


 火球が降り注ぎ、かと思えば氷の雨が降って直後は大きな炎が落ちて、草原を燃やす火力に加勢する。


 一方的に追い詰められた形の相手はなんとか無事だったが、かなり苦しい状況には違いなかった。


 と、その瞬間だった。


「ふっ、油断したな」


 エペがそう言って、ニヤリと笑う。

 見るとダームめがけて、エペの剣が飛んできていた。恐らく放り投げたのだろうが全然気づかなかった。

 あと二秒もあればダームへ届いてしまう。どうしたらいいか? と考える間もなく、彼女は魔法を放出していた。


「『アイスΓ 壁』!」


 咄嗟に氷の壁を作り、ガード。

 一枚では簡単に貫通されてしまうので、一気に五枚の氷壁を設けた。


 厚い氷に行く手を阻まれた剣は、まっすぐそれに突き刺さる。一つ目、二つ目は貫通したが、三つ目で勢いを弱め、四つ目でかなり減速し、五つ目で完全に止まってしまった。


「ねっ、魔法使いは万能でしょ?」


 盾などなくても咄嗟に盾を作れる。ある意味、普通の人間よりは万能と言える。

 そしてそのまま叫んだ。「『ファイアーΓ』!」


 またもや火球が降り注ぐ。今度は特大だった。

 それに直撃される寸前、エペは避けようとした。しかし周りも火の海だ。どちらに焼かれる選択をするか、としばし考えたあと、そっと指を鳴らした。


 するとどうしたことだろう、炎の海は消え去り、落下するはずだった火球も掻き消えてしまった。


「何をしたの?」


 慌てて、氷壁から引き抜いた剣片手に地面へ降り立つダーム。エペが一体何をしでかし始めるつもりなのかと警戒したが――。


「エペは負けを認めた。故に、試練を構成する物が消えた。……貴様の勝ちだ、魔法使いダーム。第二の試練、その突破を宣言しよう」


 しばらくポカンとし、やっとその言葉の意味を理解したダームは、「やったぁ!」と叫んでいた。


 自分が試練を突破したんだ。そう思うと、なんだかとても嬉しくなったのである。


「すげえな。あの発想は俺もなかったぜ」


「ダーム殿、おめでとうございます!」


「ダーム嬢はさすがだな! 魔力が多い上に洗練されている! あれほど美しい戦いっぷりはないだろう!」


 皆から賞賛を受け、本当に天にものぼる気持ちだった。

 ――こうして一つ目、二つ目と難なくクリアした勇者チームは、三つ目の試練に挑むことになる。


 エペは先ほどの戦闘の疲れを微塵も見せず、剣のように鋭い声を響かせた。


「最後の試練。それは……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ