51:戦士さんの奮闘
――歯を食いしばったクリーガァが思い切り壁面へ衝突を繰り出す。
ガン、という固い音がして戦士の体が弾き返された。大きな衝撃に地面が揺れる。
「戦士さん! 大丈夫?」
思わずそう声をかけるダームだが、クリーガァはまるで平気な様子で立ち上がり、またも突進。
その巨体はまたも石壁を震わせた。そしてよろめきながら、次の突進を始める戦士。
本当なら魔法でこんな壁ぶっ壊したいところだが、ダームの体力消費が激しく、それは叶わなかった。
だから今は、メンヒに軽く回復を行ってもらいながら、クリーガァの奮闘を見ていることしかできない。
「応援してるよ!」
「頑張ってくださいクリーガァ殿!」
カレジャスは今のところ状況を見ているといった感じだ。クリーガァ一人で壁を壊せるのであれば、無駄な体力を使うことを避けられるからだろう。
一方の戦士は拉致が明かぬと地面の石ころを拾った。そして大きく振りかぶり、壁へ向かって投げつける。
掌ほどのサイズはあるだろう石は弧を描きながらまっすぐに吸い込まれていく。そのまま石壁を打ち砕くはずだったのだが――。
ガキン。
高い音を立て、石が思い切り跳ね返ってきた。
石壁は多少ダメージを受けた程度で少しも揺らぐ様子がない。おまけに跳ね返った石が腕を直撃してしまい、クリーガァは倒れた。
「戦士さんっ!」
体力回復していたことなど忘れ、彼に走り寄るダーム。戦士の腕からは激しく血が噴き出していた。
「僧侶くん急いで!」
「了解です!」と言ってメンヒが駆けつけてきた。傷の具合を見て、溜息を漏らす。「残念ながら、軽傷ではないようです。治療してみますね」
すぐさま呻くクリーガァをメンヒが癒やし始めた。
ダームは彼らを背に庇うようにして立ち、聳える壁を睨みつける。
あの馬鹿力クリーガァですら破壊できなかった壁。これが一体どうやって突破できるというのだろうか……。
「心配すんな。俺がやってやる」
そう言って前に出たのは、カレジャスであった。
「でも戦士さんでも無理だったんだよ? 勇者様、大丈夫なの?」
「大丈夫に決まってんだろ。ひ弱なあいつと一緒にすんな。俺は腐っても勇者なんだから。……こんな壁、すぐに瓦礫に変えてやるよ」
止めるダームを振り切り、腰の剣を抜くカレジャス。そして一言、何かの呪文を唱えた。
直後、天から無数の雷鳴がした。