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50:守り人の挑戦状① 雲よりも高い壁

「一つ目の試練はこれだ」


 銀髪美女エペがそう言うなり、指を慣らした。

 すると突然、目の前に巨大な石壁が現れる。あまりにも急なことにダームは悲鳴を上げそうになる。

 見ると、壁の高さは雲海より上の一番高い雲をも突き抜けていた。


「なんだこれ……」とさすがのカレジャスも驚いている様子である。


 壁の向こう側に阻まれて姿の見えないエペが、その美声を響かせた。


「雲より高い壁、これを乗り越えよ。方法はどんなものでも構いはせぬ。壁を突破し、エペの元へ一人でも辿り着けば試練は終了だ。しかし諦めて山を降りようとでもすれば、エペは貴様たちを許すことなく殺すだろう」



* * * * * * * * * * * * * * *



「どういう原理で壁が現れたかは理解不能ですが……、とにかくやるしかなさそうですね」


 ダームはメンヒの言葉にこくりと頷いた。


 石壁を見上げてみる。雲を突き抜けた先が見えず、どこまであるのかわからない。


 普通なら目に見えて無理難題だ。

 人間がこんな壁を乗り越えられるはずがない。空を飛べるなら別だが……。


 しかしダームには、その術があった。


「あたしがやってみる」


「お前が?」カレジャスが首を傾げた。「大ジャンプでもできるって言うのかよ?」


「まあね」と答えると、ダームは黒いローブを整えて、叫んだ。


「『ウインドΓ 浮遊』っ!」


 その途端ふわりと体が浮かんだ。

 そして目にも止まらぬ速さで天へ登っていき、下に見えるカレジャスたちの姿が小さくなる。


「もっともっと、『浮遊』! 『浮遊』っ!」


 風が下から激しく吹き上がり、天へ天へ向かっていく。

 雲を突き抜けた。しかし、石壁はまだ続いている。どこまで行ったら終わりがあるのか、そう思った時だった。


「ぐっ……。な、何これ?」


 急に息が苦しくなり、ダームは小さくうめいた。

 大気が薄くなっているせいなのだが、そんなことは彼女は知らない。とにかく上がろうと必死になるが、息を吸っても吸っても入ってこない。


「く、苦しい……っ。あ、落ち」


 落ちる、と言い切る前にダームの体は下へ向かって落下を始めていた。

 魔力が切れた、わけではない。あまりの息苦しさに魔法が使えなくなったのだ。


 落ちる、落ちる、落ちる――。


「おっと危ねえ!」


 地面に顔面が衝突する寸前、カレジャスが慌ててダームの体を受け止めた。

 どさ、と彼の胸の中へ落ちる少女。カレジャスを巻き添えにして倒れてしまったが、なんとか無事だった。


「ご、ごめん……。また助けられちゃったね、ありがとう」


「気にすんな。それにしてもさっきまでの自信はどこ行った? まんまと落ちてきやがって」


 怒られても仕方ない。

 ダームは軽く事情を話す。それを聴き終えて僧侶と勇者は困り果てたような顔をした。


「つまり乗り越えることは不可能、ということですね」


「じゃあどうすんだよ」


 しかし、クリーガァはちっとも諦めた様子を見せずに言ったのだ。


「では壁を破壊しよう! エペ嬢は『逃げたらいけない』と言ったが、石壁を崩してはならないとは一言も言っていない! 私がやろう!」


 そこは盲点だった。考えればすぐ思いつくはずだったが、乗り越える方法しか頭になかったのである。

 他の全員が彼の案に賛成し、壁を崩壊させるための行動を開始した。



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