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05:愉快なパーティーメンバー

 色鮮やかなテントに見惚れていたダームは、とある声で我に返った。


「あっ。カレジャス殿、お帰りになったのですね」


 そう言ってテントから出てきたのは、背の低い黒髪黒瞳の少年だ。

 童顔で、年齢は十七、八だろうか。

 全身を法衣らしきもので包んでおり、その格好や喋り方にはどことなく気品が感じられる。


「おうよ。たっぷり蛇肉採ってきてやったぜ!」


「さすがカレジャス殿。頼りになりますね。……はて、そちらのお嬢様は?」


「こいつか。ほら、もう歩けるだろ」


 勇者にやや乱暴に降ろされ、軽く地面を転がるダーム。が、気を取り直して二本の足でしっかり立つと、名乗り上げた。


「あたしはダーム。勇者様に助けられたんだ。それで……」


 勢いで事情を話そうとするダームだが、勇者に阻止された。


「話は全部後な。この蛇肉が腐っちまう前にとっとと食うぞ」


「ちょっとぐらい話させてよ、勇者様のケチ」


「ケチとかの問題じゃねえだろ。ったくこの女は」


 そんな二人を見て少年はくすりと笑い、言った。


「出会って数時間と思われるのに、打ち解けるのが早いんですね。感心しました。僕はメンヒ。しがない僧侶をやっております」


「僧侶くん、よろしく!」


 少年――メンヒに手を振り、ダームは勇者に手を引かれるままにテントの中へ入った。



* * * * * * * * * * * * * * *



「やあカレジャスくん、お帰り! おやっ、誰か連れているようだな! 誰だ!」


 いきなり大声でそう叫んだのは、禿頭の大柄な男だった。

 腕も脚もボディも、ムキムキの筋肉質。着ている服が今にも弾けそう。

 ダームは若干気圧されつつ、頭を下げる。


「こんにちは、ダームだよ。あなたは?」


「私はクリーガァ! この世界で最強の男だ! はっはっはっは!」


 このハイテンションは想像以上。明るい人だと、ポジティブに捉えるとする。

 勇者によると、彼は戦士らしい。道理で体格が大きいわけだと納得した。


「蛇肉を取ってきてくれたのか! 今すぐ料理しよう!」と言うなり、戦士クリーガァは、勢いよく走って行ってしまった。


「あいつ、最高にうぜえだろ」


 ため息を漏らしながらのカレジャスの言葉。それに、ダームは首を傾げる。


「戦士さんのこと勇者様は嫌いなの?」


「いけ好かねえんだよ。でもあいつら、俺の仲間だからな」


 吐き捨てるように言って、勇者は地面に腰を下ろした。

 つまり、戦士と僧侶は勇者パーティーの仲間ということだろう。


「ふーん」と頷き、ダームも同様にする。


 とその時、思い出したようにカレジャスが声を上げた。


「いけねえ、夕飯の前にお前着替えさせねえとメンヒに怒られちまう!」


「あっ」


 確かに、ダームの衣装は相変わらず泥まみれの破け服。これでいては汚らしいにも程がある。


「女もんの服がねえんだよな……。よし、これでも着ろ」


 彼に押し付けられたのは、一着のコート。長丈であり、一枚だけで必要な部分は隠せるだろう。

 ダームはそれを身に纏った。ゴワゴワするしいい気持ちはしないが、しばらくはこれで耐えよう。


「似合ってるぜ」と笑う勇者。お世辞なのか美的センスがないのか……。


 そうこうしているうちに、メンヒがダームたちを呼びにきて、夕食が始まったのである。


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