05:愉快なパーティーメンバー
色鮮やかなテントに見惚れていたダームは、とある声で我に返った。
「あっ。カレジャス殿、お帰りになったのですね」
そう言ってテントから出てきたのは、背の低い黒髪黒瞳の少年だ。
童顔で、年齢は十七、八だろうか。
全身を法衣らしきもので包んでおり、その格好や喋り方にはどことなく気品が感じられる。
「おうよ。たっぷり蛇肉採ってきてやったぜ!」
「さすがカレジャス殿。頼りになりますね。……はて、そちらのお嬢様は?」
「こいつか。ほら、もう歩けるだろ」
勇者にやや乱暴に降ろされ、軽く地面を転がるダーム。が、気を取り直して二本の足でしっかり立つと、名乗り上げた。
「あたしはダーム。勇者様に助けられたんだ。それで……」
勢いで事情を話そうとするダームだが、勇者に阻止された。
「話は全部後な。この蛇肉が腐っちまう前にとっとと食うぞ」
「ちょっとぐらい話させてよ、勇者様のケチ」
「ケチとかの問題じゃねえだろ。ったくこの女は」
そんな二人を見て少年はくすりと笑い、言った。
「出会って数時間と思われるのに、打ち解けるのが早いんですね。感心しました。僕はメンヒ。しがない僧侶をやっております」
「僧侶くん、よろしく!」
少年――メンヒに手を振り、ダームは勇者に手を引かれるままにテントの中へ入った。
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「やあカレジャスくん、お帰り! おやっ、誰か連れているようだな! 誰だ!」
いきなり大声でそう叫んだのは、禿頭の大柄な男だった。
腕も脚もボディも、ムキムキの筋肉質。着ている服が今にも弾けそう。
ダームは若干気圧されつつ、頭を下げる。
「こんにちは、ダームだよ。あなたは?」
「私はクリーガァ! この世界で最強の男だ! はっはっはっは!」
このハイテンションは想像以上。明るい人だと、ポジティブに捉えるとする。
勇者によると、彼は戦士らしい。道理で体格が大きいわけだと納得した。
「蛇肉を取ってきてくれたのか! 今すぐ料理しよう!」と言うなり、戦士クリーガァは、勢いよく走って行ってしまった。
「あいつ、最高にうぜえだろ」
ため息を漏らしながらのカレジャスの言葉。それに、ダームは首を傾げる。
「戦士さんのこと勇者様は嫌いなの?」
「いけ好かねえんだよ。でもあいつら、俺の仲間だからな」
吐き捨てるように言って、勇者は地面に腰を下ろした。
つまり、戦士と僧侶は勇者パーティーの仲間ということだろう。
「ふーん」と頷き、ダームも同様にする。
とその時、思い出したようにカレジャスが声を上げた。
「いけねえ、夕飯の前にお前着替えさせねえとメンヒに怒られちまう!」
「あっ」
確かに、ダームの衣装は相変わらず泥まみれの破け服。これでいては汚らしいにも程がある。
「女もんの服がねえんだよな……。よし、これでも着ろ」
彼に押し付けられたのは、一着のコート。長丈であり、一枚だけで必要な部分は隠せるだろう。
ダームはそれを身に纏った。ゴワゴワするしいい気持ちはしないが、しばらくはこれで耐えよう。
「似合ってるぜ」と笑う勇者。お世辞なのか美的センスがないのか……。
そうこうしているうちに、メンヒがダームたちを呼びにきて、夕食が始まったのである。