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49:剣の守り人

 その人物は、まだ年若い女性だった。

 腰に長剣を差し、長い銀髪を背に流した長身の彼女は、どこか近寄りがたいような鋭い美貌を放っている。

 赤い瞳はこちらをまっすぐに見つめているが、何を考えているのか伺えない。ダームはとても奇怪な美女という印象を抱いた。


 最初に声をかけたのは戦士クリーガァであった。


「そこの女性! あなたは一体何者だろうか!」


 すると女性は、眼光をさらに鋭くした。


「人に名を問うておきながら自らは名乗らぬ。その無礼を剣は認めない」


 きっと笑えば可憐な女性なのに、その雰囲気が少しばかり恐ろしく思えた。

 クリーガァは慌てて名乗る。


「申し遅れたが私は戦士のクリーガァだ! そして彼が」


 指を指されたカレジャス。彼は屹と戦士の方を睨みつけながら言った。「俺は勇者カレジャス。これで気が済んだか」


「あと二人、名乗り足りぬがあとで聞くとする。……ほぅ。貴様、勇者と言ったな。それで剣を求めて来たわけか」


 銀髪美女は納得したように頷くと、


「こちらは剣の守り人、エペだ。今から、エペから貴様たちに試練を課す」


 嗜虐的な笑みを浮かべる彼女。

 ダームはなんだか背中がぞわりとした。


「あたしは魔法使いのダーム・コールマン。守り人さん、試練って?」


 しかし剣の守り人――エペは、「もうじきわかることだ」と言って答えてくれない。


 困惑していると、隣のメンヒがそっと耳打ちしてきた。


「ダーム殿。エペ殿には気をつけた方がいいかと。剣の守り人と名乗られた以上、石竜や氷の怪物と同列と考えるべきです。危険極まりない」


「わかってる」と答えたダーム。

 だが、エペがこんなことを言った。


「エペは他の魔物とは格が違う。あやつらのように理性を失ってはいないのでな」


「げ、聞こえてた?」


 どんなけの地獄耳なのか。エペからは勇者と戦士を挟んで、かなり離れている。その状態で小声で言ったのに……。


 ダームとメンヒの動揺などよそに、カレジャスは話を始めてしまった。


「試練がどんなものであろうと構わねえ。それを超えられたら、伝説の剣を渡してくれるんだろうな?」


「決まっている。剣は嘘をつかない」


 山頂の草原、本当なら行楽にはもってこいであろうそこに、身を刺すような緊張が張り詰めた。

 今から一体何が始まるのだろうと身を固くするダームたちへ嗜虐的に微笑んだエペは、こう告げた。


「今より試練を開始する。――存分に苦しみもがくがいい」


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