48:最後の装備を求めて
あれから何日かが経って、勇者一行は南の帝国へ戻ってきていた。
勇者たちと初めて出会ったあの森を抜け、向かう先はさらに南の山岳地帯。そこに、最後の伝説の装備があるというのだ。
麓の村で聞いたところによればそれは伝説の剣。山の頂上にそれがあるのだとか。
しかし村ではその山は禁忌とされており、カレジャスが伝説の剣を求めて山を登ると言った途端に村人たちは激しく阻止した。
どうやら剣が呪われているという噂があるらしく、山へ入ったものはどんなことがあっても戻らない。だから気味悪がられているということだ。
「あんな山はおよし。悪いことは言わないから」
でももちろん、だからといって見逃すわけにはいかない。一行は止める村人の手を振り払い、なんとかかんとか山の中に逃げ込むようにしてやってきた次第である。
* * * * * * * * * * * * * * *
「山道、険しいですね」
「車輪が軋んでる。このままじゃ止まっちゃうんじゃない?
馬車は現在、山の斜面を登っていたが、傾斜がきつすぎて進めない。前方から馬の嘶く声が聞こえ奮闘しているのがわかったが、やはりダームの予想の通りで、馬車はそのうちに動けなくなってしまった。
クリーガァが御者台から出てきて言った。
「この先は馬車をここに置いて歩いて行くしかないだろう!」
カレジャスは不満そうに顔を歪めたし、メンヒもダームもこの坂を徒歩で行くのが辛いくらいは一目でわかった。
しかし他に手段はないし、もたもたしている時間も惜しい。仕方ないと四人は馬車を降りた。
そして、地道に登り続けること数時間。
途中で変な野生動物に襲われたり、足を取られて急坂を滑り落ちそうになったりとハプニングが色々とありつつも諦めなかった。
残してきた馬のことも考えると、そう長くは放置しておけない。ダームたちは必死だった。
そして天高い雲を突き抜け、やっとこさ頂上が見えた。
崖っぷちに手をかける。ぐぃと体を持ち上げ、登り切った。
「ちょ、頂上だ……」
そうかすれた声を漏らして、ダームは崩れ落ちるように座り込んだ。
そして周囲をぐるりと見渡すと、頂上に広がるのは素晴らしい絶景だった。
あたり一面を覆う雲海、頭上の青空。そして木々の立ち並ぶ山のてっぺんに、こちらに背を向けて一人佇む人物の姿があった。
「え……?」目を疑った。まさかこんなところで人と遭遇するなんて思ってもみなかったからだ。
その人物はパッと振り返り、顔を見せた。そして一言、
「ようこそ。人が来るのは久しぶりだからこちらも驚いているところだ」
血の如く赤い瞳が、ダームたちを鋭く睨みつけていた。




