46:魔法使いの気持ち
「ダーム殿、本当にこれで良かったのですか?」
馬車の窓からすっかり遠くなった公爵邸を眺めていると、メンヒにそう言われた。
ダームは振り返り、にっこりと笑う。
「いいのいいの。王子様に復讐できたし鎧も手に入ったし母様と父様に会えた。これで今のあたしには充分なんだから」
むしろ、贅沢すぎるくらいかも知れない。
これはダーム一人じゃこれはなし得なかったことだ。
「僧侶くん、本当にありがとう。もし僧侶くんがいなかったらあたし、何もできずに終わってたと思う」
「いえ。僕はおまけですよ。復讐を遂げたのはダーム殿なのですから」
ダームの言葉に、メンヒはゆるゆると首を振った。
でもダームにはわかる。それが単なる謙遜であることを。
「僧侶くんはわかってないかも知れないけど、あたしだって立派な人間じゃないよ。みんなに支えられて、それでようやく立てるの。……あのね、それで一つだけ言いたいことがあるんだけど」
カレジャスとメンヒの視線が、一気にこちらを向いた。
ダームはごくりと唾を呑む。少しばかりの躊躇いはあったが、もう言ってしまおう。
茶色の瞳に覚悟の色を灯して、魔法使いの少女は口を開いた。




