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42:鎧の取引

「どうやったら譲ってくれんだよ。こっちだって暇じゃねえんだ、とっとと話つけようぜ」


「――だから鎧は譲れないと言っている。あれは我が王家の宝だ。身分がどうであれ、他国の者に渡すつもりはない」


 頑なな王の答えに、カレジャスは思い切り唾を飛ばして怒鳴った。


「じゃあ世界が滅んでもいいのかよ! お前らは知らねえだろうが、滅びは近づいてるんだぞ。魔王を倒しにいくにはその鎧が必要なんだよっ。もし今俺に、俺たちに渡さないと言い張ってみろ。この先どうなっても知らねえぞ」


「カレジャスくん、落ち着きたまえ! ……が、私も彼の意見に賛同だ! どうしても必要なんだ!」


 勇者と戦士の訴えに、だが国王はひたすら首を振るばかり。

 交渉は平行線で、いつまで経っても終わりが見えない。


 ――ここは、王座の間。

 現在鎧の取り引き交渉をしているのだが、うまくいっていなかった。


 そんな様子をニヤニヤ眺めている王子もいやらしいったらない。むかっ腹が立つ。


 ここにメンヒがいれば……、という考えがカレジャスの頭に浮かんだ。しかし、彼はすぐにそれを打ち消す。


「いけねえ。あいつにばっか頼ってちゃ、どこが勇者だよ。考えろ考えろ」


 問題は、こちらが交渉材料として出せるものが少量の金しかないことだ。

 仲間を売ればあるいは、と考えたものの、それはあまりにも心が痛む。しかしそれ以外に何があるだろう?


「こちらが例の鎧を渡したところで、こちらに利益がない。世界が滅びの寸前であるという話は耳にしたことがない故、誠か嘘か判断できかねる。よって、この商談は成り立たない」


「どうしても必要なんだって言ってるだろ! 伝説の装備は全部集まらなきゃ、何の意味も持たねえんだ。一個でも逃したらダメなんだよ」


 クリーガァは様子を見るようにして黙っている。手伝ってほしいところではあったが彼が商談などできるはずもない。


 ――このまま諦めるしかないのか。


 思考をフル回転させても、何もいい考えは浮かばなかった。

 王が「そろそろお引き取り願おう」と言い出す。今何か言わなければ、鎧を得る機会は永遠に失われるというのに何の言葉も出てこない。


 何か、何か何か何か何か何か何か何か――。


「――お待たせしました」


「後は任せて、勇者様」


 ふと、声のした方を振り返り、カレジャスは呆気に取られた。

 玉座の間の大扉を開け放って現れたのは、行動を別にしていたはずのメンヒとダームだったのである。


「お前ら、なんでここに」


 思わず声を漏らすカレジャスにウインクして、ダームは悪戯っぽく微笑んで、言った。


「それは大事な大事なお話をするためなの。ね、王子様?」


 カレジャスはその瞬間、一筋の光明が差したような気がした。

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