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36:魔法使いの決意

 夕食の後一同はそれぞれにあてがわれた部屋に向かった。

 ダームの部屋は客人用のワンルーム。ベッドと机が置かれただけの簡素なものだ。


 ベッドにゴロンと横になり、ダームは一人、考えていた。


 婚約破棄されたあの日以来、ずっとダームは彼のことを忘れようと努力してきたのだと思う。

 勇者たちといられて楽しかったのは本当だ。でも心の奥底に潜むやりきれない気持ちはずっと残っていて、それがまたプリンツと再会したことで爆発したというだけのこと。


 いつまでもグジグジと言っているのなんて情けない。だから――。


「ケジメをつけなくちゃ」


 ダームはそう、決意した。



* * * * * * * * * * * * * * *



 部屋から場所を移し、ダームはテラスに出ていた。

 夜風が涼しく気持ちいい。その中でぼうっと佇みながら、少女は頭を悩ませる。


「うーん……。ケジメをつけると決めたけど、問題は山積みだなあ」


 思い返せばまだろくに、別れの言葉さえ言えていないのだ。婚約者同士が別れるその時、せめてもの一緒に過ごした時間を終わらせるべく言葉を捧げなくては。

 でもどうやって決着をつけるか、そこが非常に悩ましい点だった。


 王子を呼び出す。その手もある。

 しかしその後どうするのがいい? 呼び出して「さようなら」と言うのだとして、ダームの立場はどうなるのだろう。たとえ冤罪であれ、彼女は国外追放された身だ。戻ってきたと知れたらどんな目に遭うか……、想像もしたくない。


 かといってじゃあどうするのかというと、置き手紙を残すくらいの手しかないような気がした。そこに魔法を仕掛けて王子を爆発させるのだ。


 木っ端微塵になる美丈夫の姿が浮かび、思わず滑稽だと笑ってしまった。だが。


「ダメダメ。王子様にそんなことしたら悪いよ」


 怒りに飲まれてはいけない。考え直しだ。


 でも他の案が浮かばない。ダームは元々、自分が頭が良くないことくらい知っている。


 決意だけはしたものの、どうすることもできない己に腹が立った。


「やっぱりあたし一人じゃ無理だ。もし誰かがいてくれたら……」


 そう言ってため息を漏らしたその時であった。

 背後から少年の声が聞こえたのは。


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