27:二人きりの告白
息を大きく吸い、言い切った。
「それは、あたしが勇者様を好きだってこと!」
胸の鼓動が激しく、自分でもあからさまに頬が熱くなるのを感じる。
貴族であれば婚約し、結婚するのが通例。家柄が優先で、普通は恋愛感情といったものは持たない。持ってはならない。
しかし今はただの魔法使いだ。だから言える。
「信頼してた王子様に裏切られてさ。国を追放されて何もわからなくなってた。そんな時、あの森の中で泥水に汚れて蛇に襲われて、もうすぐ死ぬってところを、かっこよく助けてくれたでしょ? 実はあの時にあたしはもう一目惚れしてたんだ」
息が荒くなるのを感じる。
ダームは、もう雪のことや残してきた二人のことなど頭にない。今は隣の青年だけをじっと見つめ、彼のことだけを考えている。
「それからも色々あったじゃん。それでどんどん好きになって……、あの石竜との戦いとかさ、もうキュンキュンしちゃった。乙女心? きっとそれなんだと思う。例え勇者様が周りの人全員嫌いだと思ってて、自分のことも嫌ってたとしても、あたしだけは勇者様のことが大好き。ずっと大好きだから」
恋してる。胸が焼け焦げるほど、熱く。
ダームはずっと前から、初めて出会ったその瞬間から、彼に強く恋している。
だから、
「この想い、受け取ってくれるかな?」
ダームは己の茶色の瞳で、相手をじっと見据える。
カレジャスは度肝を抜かれたような顔をしていた。やっと少しばかり冷静さを取り戻すと、
「つまり、お前俺に告ってるってことでいいんだよな?」
「そういうこと。真っ白な雪の中、山小屋で二人きりの告白。なんか夢があるじゃない」
勇者の表情に、色々な感情が宿る。
それが嵐の如く過ぎ去った後、彼は一言、
「ありがとよ」と言った。
「返事はまだはっきりとは言えねえ。でも俺のことを好きって言ってくれたのは正直ちっとばかし嬉しかった。……そんなこと言われたことなかったんでな」
「あたしも、伝えられてよかった。恋する乙女なんだから、邪険に扱わないでよね?」
「わかったわかった」と適当に答えながら、ダームの肩に手を回してくるカレジャス。ダームはそれを受け入れる。
そのまま二人はじっと身を寄せ合っていたのだった。




