20:なんとか無事に戻れました
「……ぁ、か、帰ってきた」
そう言って馬車から顔を覗かせた少女フィーユに、ダームは大きく手を振った。
「ただいま! なんとかかんとか無事に戻れたよ」
「ど、洞窟崩れちゃった……けど、だ、大丈夫?」
「うん大丈夫大丈夫。あたしの魔法のおかげでね」
ちょっと誇らしい気持ちで胸を張って見せる。事実、ダームが勇者パーティー全員を救ったようなものだ。
「見ろよこの兜、かっこいいだろ」と早速兜を自慢するカレジャス。フィーユはおどおどしながらも、頷いていた。
「馬車守りありがとうございます。非常に助かりました」
「う……、ううん、全然……。ちょ、ちょっと怖かった……けど」
「それでも頑張ったフィーユ嬢は偉い! 心から感謝しなくてはだな!」
本当によく頑張ってくれたとダームも思う。早くフィーユを家に帰してあげなくては。
軽く夕食を取り、馬車は再び都市ハンデルに引き返すべく走り出したのであった。
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ハンデルに戻ってきたのは翌朝早く。
フィーユの案内で彼女の家まで同行し、両親に頭を下げた。
最初はダームたちを軽蔑した目で見ていた彼女らの両親だが、フィーユから話を聞いて頷いてくれた。
「娘は昔、変な男に絡まれたことがあってね。それ以来知らない人とは関わらせないようにしてたの。でもあなたたちはいい人みたいで良かったわ。こちらこそ、娘を楽しませてくれてありがとう、魔法使いさん」
「いえいえ〜」
ということで、フィーユとはお別れすることに。
手を振りながら、笑顔で「さよなら」と言う。もう会うことはないだろうけれど、なんだか心が暖かくなった。
平民の子供と話すのなんて初めて。大抵がこちらに恐れ慄いて話してくれず、また関わることも許されない生活。そんな公爵令嬢という身分から解き放たれて良かったと、この時ばかりは思った。
「さて。この街に長居してる暇はねえ。用が済んだんだから次の街に行こうぜ」
カレジャスの声に、ダームは「うん」と頷いた。
次の目的地はこの街よりはるか北なんだそう。旅路は五日ほどの予定だ。
「準備完了です。ダーム殿、馬車へ」
「はぁい」
ダームが乗り込むとすぐに馬車は風の如く走り出した。
「北の国には一体何が待ち受けているのかな」
車窓の外を眺めながらダームは色々な考えを巡らせる。
また勇者一行の役に立てることがあればいいなと思うのだった。
これにて第二章完結です。
次から数話は幕間となります。
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