14:勇者様の使命と目的
「うわあ〜、すっごい」
街には人がごった返しており、とても活気に溢れている。
――ここは東の共和国。
国の中心都市ハンデルに訪れた勇者一行は、この街を見回りながら、話を聞いて回っていた。
次の目的地の場所を知るためだ。
「地図で見たところ、候補が二、三点ありまして。いちいち行ってみる時間はないので、聞き込みをしましょう」
メンヒの提案で、この日は朝早くから街を練り歩いているのだが……。
「すまない! 私はこちらの地区を一通り回ったのだが、誰も知らないと言っていた!」
「俺も全然だ。商店街回ったが、クリーガァと同じだぜ」
「僕の方も申し訳ありません、今度はあちらの人に聞いて回ります」
皆、良い結果は出ていない。
ダームは馬車守りをしているため、ただ退屈なだけ。自分も何か力になりたいのにと気をもむことしかできなかった。
しかし日が昇り昼前になる頃には、他三人はヘトヘト。逆にダームはもう馬車守りに飽きてしまっていた。
男どもが三度目の失敗報告を届けにきた時、ダームはこう言い出した。
「じゃあ今度はあたしがやってみる。代わりに戦士さんが馬車守りしてくれるかな?」
「そうだな! ダーム嬢の提案も一理あるだろう! 私は一向に構わない!」
ということで交代し、馬車の外へ飛び出したダーム。
ところが、メンヒにそれを引き止められてしまう。
「女性が一人で街歩きするのには、多少の危険が伴います。僕がご同行しましょう」
なんだか、こういう街には強盗やら何やらがかなりの確率で出現するのだとか。箱入り娘のダームにはいまいちわからなかったが、危ないと言われたのだし素直に従うか。
「メンヒだけじゃ力が足りねえだろうよ。俺も一緒に行くぜ」
と、いうことで、三人が一塊になり聞き込み再開となったのである。
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「ところで勇者様は何を探してるの?」
ダームはそう言って首を傾げる。
考えてみれば彼女、勇者パーティーの魔法使いに抜擢されたものの、彼らの旅の目的などを一切知らなかった。そのことに今やっと思い至ったのだ。
「そうか。まだ言ってなかったな。……俺はな、魔王退治を任されてんだよ」
「魔王退治?」
「魔王のことも知らねえのか」と呆れ顔のカレジャス。でも知らないものは知らないのだから仕方ない。
勇者に代わってメンヒが説明してくれた。
「西の王国にはあまり伝わっていないのかも知れませんが、帝国では有名な話ですよ。四つの国に取り囲まれた世界の中心点、そこに大穴があるというのです。そしてその下に魔王がおり、この世界を狙っているのだとか。実際、魔王の使者と思われる者が地上を襲ったという記録が多数あります」
初耳だった。そんな奴がこの世界に存在するなんて。
「で、それをやっつけようってのが俺の役割。だがこの装備じゃとてもその魔王ってのには勝てねえ。だから今、装備を集めてるんだぜ」
僧侶から引き継いで大まかに事情を話したカレジャス。
ダームは「ふーん」と深く頷いた。
「今は伝説の装備探しなんだね。すごい、それをつけたら世界最強ってこと?」
「そういうこと」
「へえ! 世界最強の勇者様、見てみたいな」
カレジャスは「今でも世界最強だがな」と笑う。
何にせよ、
「それでその場所がわからないから聞き込みしてたんだね?」
「その通りですよダーム殿。呑み込みが早くて助かります」
確かにそれは、なかなか誰でも知っている話ではなさそうだ。
そもそも伝説の武器・防具集めをしているくせにどうしてありかを知らないのかが気になるが、そこはツッコミをしないでおくとして――。
「勇者様の目的を知れて良かった。とにかくあたしに任せてみて」




