100:それぞれの道を行く
愛の誓いの後、ご馳走やら踊りやらと、パーティーは大盛況であった。
しかしやがてお開きとなり、ダームたちは公爵夫妻と一緒に王国へ向かうことに。これからは、公爵邸で暮らすのである。
実はメンヒは公爵家に入籍することを決めていた。
ダームは別に魔術師の家に嫁いでもよかったのだけれど、メンヒが「王国で暮らしたいです」と言ったものだからこう決まったのだ。
マーゴも認めてくれたようだし、ダームはなんら不満はない。むしろ公爵邸でまた暮らせるなんて、嬉しくて仕方ないくらいだ。
「あなたみたいな優秀な子なら、メンヒをきっと幸せにできるわ。……また私のところにも遊びに来るのよ。いつでも待ってるから」
「わかった。また来るね、魔術師さん!」
* * * * * * * * * * * * * * *
そうして公爵家へ戻ってきたダーム・コールマンは、夫のメンヒと一緒にのんびり暮らし始めた。
大抵は屋敷で何気なく過ごし、たまに街へ出向いては子供たちに魔法を教えたりする毎日。
いつの間にか弟子は増えていき、三年経った今ではすっかり人気者になった。
メンヒは日々の平穏を祈りながらいつも彼女の傍で微笑んでくれる。
それが嬉しくて、ダームはますます彼のことが好きになるばかりだった。
時々は帝国へ行っては魔術師マーゴや戦士クリーガァとよく顔を合わせることもある。その度に話に花を咲かせ、それはそれは楽しい時間を過ごすのだ。
……けれど、あの結婚式以来カレジャスには会えていない。
噂では世界中を旅しているらしいが、今一体どこにいるのやら。
でも彼は無事だとダームは信じて疑っていない。
きっとある日ふらっと屋敷へ突然現れて、「よぅ。何年ぶりだ?」なんて言い出すに違いないのだ。
その日を待ち望みつつ、ダームはあの日もらった花束へ目をやる。
金や赤、白の花々はずっと枯れることなく咲き乱れ続けている。
まるで、未だに勇者に恋焦がれるダームの心を表しているかのように思えるのだった。
《完》
これにて『婚約破棄追放の悪役令嬢、勇者に拾われ魔法使いに!? ざまぁ、腹黒王子は許さない!』は完結となります。
長い物語にお付き合いくださり、ありがとうございました。
どうかブクマは外さないようお願いします……。(切実な気持ち)
評価、ご感想などを頂けると本当に嬉しく思います!




