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第七話 異世界の友達③

一週間に一話、出せたら二話出せるように頑張る所存。

「――“界”を渡る魔法…………。」


 ハルは、魔王に謁見した際にその魔法について教えてもらうという。

 昨日聞いた話では、魔王はこの世で最も魔法に優れた者に与えられる称号。

 最も魔法に精通している人物。

 要は魔法をこの世界の中で一番知っていて、一番詳しいのだろう。

 そんな人なら“界”を渡る魔法もきっと知っているはずだ。


「まずは、出場権を得なければ始まらない。」

「それはどうやったら手に入るの?」


 出場権を得られるのは、国の中でたった二人だけ。

 魔法で闘う大会へ出るのだ。

 抽選で決まるという訳にはいかないだろう。


「リーストンはとても小さな国。ここにいる生徒のほとんどは卒業した後、大きな国へ出ていってしまう。」


 小さな世界の中では、どうしてもできることが限られてしまう。

 自分の夢を叶えるために大きな町、国へ飛び出していくのは、異世界でも変わらないのだろう。


「この国にいる人は、穏やかな生活を送る人達ばかり。自分から“大会”に出ようとする人はいない。」


 穏やかな生活を望むものが、苛烈さを極めるであろう魔法での闘いに出ようとするはずがない。

 その人たちにとって“大会”とは、見て楽しむものなのだろう。


「だからリーストンでは、このホロウド魔法学校の生徒の中から出場者を二人決めている。生徒全員で闘い、勝ち残った二名が“大会”に出場できる。」


 優斗は周りを見渡す。

 生徒全員で闘うということは、この場にいる生徒たちが皆、敵になるということ。

 すなわち、


「セスタとアンクルとも闘うことになるんだね。」

「そうだね。」


 知り合って間もないが、すでに二人のことを好ましく思っている優斗。

 ハルも同様。

 学校生活始まって以来、初めて親し気に言葉を交わせた二人。

 好ましく思わない訳がない。

 日を追うごとに、きっとさらに友好関係を深めることができるだろう。


 生徒それぞれが、“大会”に対し並々ならぬ想いがある。

 セスタとアンクルも例外ではない。

 勝負の結果によっては恨まれることになるかもしれない。

 しかし…………


「私は私の目的のために全力を尽くす。誰が相手でも絶対に負けない。」


 その澄んだ青色の瞳には、確固たる決意が浮かんでいた。

 相手が誰であっても、どんな想いを持っていたしても、関係ない。

 必ず勝利を手にして見せる。

 そんな強い意志を見せる、美しいその表情に優斗は自然と目を奪われる。


「フハハハハハ!レーナ先生待たせたな!」

「グガッ」


 彼女の横顔から目が離せない優斗。

 しかし、呆れるほど広大な校庭中に響き渡る地響きとそれに負けない声量で発する不敵な声が聞こえ、視線はそちらに移されてしまう。


「もう!遅いよダイン君!何してたの!?」


 巨大な足音と、声ですぐに気付いた通りダイン・ネセルゴとその従魔、オーガロードのオニオンのようだ。

 山のような巨体の左肩に乗って、こちらに向かってきている。


 レーナが、屈託のない笑顔を見せるダインに遅れた理由を問う。

 魔力測定は残すとこ、二名。

 大遅刻である。


「すまない!道に迷った老人を目的地まで案内してたゆえ遅れてしまった!」

「そ、そうなの?それなら仕方ないかなぁ。」


 人助けをしていて遅刻してしまった、と理由を述べるダイン。

 寝坊や寄り道ならともかく人のために動いていたとあれば、強くは言えないと、レーナはそれ以上彼を責めることはしなかった。


 オーガロードが近づいてくるにつれて圧迫感が増してくる。

 レーナを含め、多くの生徒が体を強張らせ、顔には引きつった笑いが浮かんでいる。

 生物としての格が違う、強大な魔獣。

 魔獣と関わってきたとはいえ、これ程の巨大さ、力を持つモノと出会うことは今まで無かった。

 未だに慣れないため、緊張感が消えないのは仕方のないことだろう。

 主人のダインは肩の上でリラックスして座っているが。


「ちなみにどこまで案内してたんだよ?」


 生徒の一人がダインに質問を重ねる。


「『ラバイ』というところだ!」

「『ラバイ』…………大陸の端の国じゃねえか!いや、転移陣があるからすぐ行けるか……。」

「む?転移陣とは何だ?」

「走って行ってきたのかよ!?」


 ――転移陣

 遠く離れた場所まで、一瞬で移動することができる転移魔法が刻まれた魔法陣。

 各国の至る所にあり、長距離の移動に便利な転移陣はこの世界ではメジャーな交通手段だ。

 しかし便利なだけあって、無料(ただ)という訳にはいかなく、利用するには高い交通量が必要になる。

 それでも利用者が大多数なのは、距離や時間、旅路に付きまとう危険を無視して目的地まで安全に、確実に行けるからだろう。


 国内の移動ならともかく、外国への移動となると交通手段の候補として真っ先に上がるのがこの転移陣。

 ハルが情報探しのために他の国を訪れていた時もこの転移陣を使っていた。

 その転移陣を使わない選択をする以前に、知りもしなかったというダイン。

 その言葉に生徒全員が驚愕の表情を浮かべる。


「徒歩なら二日かかる場所だよな?」

「マジでバケモンだな……。」


 片道徒歩で二日かかる場所を、ものの数時間で行き来した。

 にも関わらず、息の乱れ、汗をかいた様子は見られない。

 その底知れない実力に、全員が驚きを隠せない。


 ダインはオニオンの方から飛び降りると、スタっと軽い音を立てて着地する。

 生徒たちの様子を意に介することなく、残り二人となった列に並ぶ。

 腕を組み、しばらく黙って並んでいたダインだが、中々再開しない魔力測定に我慢できなくなったのか、唖然として固まっているレーナに声を掛ける。


「レーナ先生!遅れて申し訳なかったがそろそろ始めてはもらえぬか?我は早くオニオンの魔力が如何ほどか知りたいゆえ!」


 レーナはようやく授業のことを思い出したのか、ハッとした表情になると慌てて水晶がある位置に戻る。


「ご、ごめんね!次行くよ!ディラン・ヒーゼス君!」


 その後、順調に二人の魔力測定は終わり、とうとうダインとオーガロードの番が回ってきた。


「さあ、オニオン!魔法陣の真ん中へ!」


 魔法陣の中で、まっすぐに立つオニオン。

 少し体を縮こまらせているのは、そうしないと魔法陣の枠内に体が収まらないからだろう。


 自由に時間を過ごしていた生徒は、優斗の魔力測定の時と同様、水晶の前に集まりだす。


「どのくらいだろうな?」

「以外にしょぼかったりしてな。」


 いつの間にか取っ組み合いを終えていたセスタとアンクルが優斗の隣に来ていた。

 オーガロードの魔力についてアレコレ予想を立てている。

 先程まで喧嘩していたのに、すでに二人一緒になって考察しているところを見ると、本当は仲が良いと感じたのはやはり気のせいではなかったようだ。


 皆が注目する中、魔法陣が光を放ち、ほぼ同時に水晶からも光が溢れ出す。

 光が収まった水晶玉に生徒たちが注目する。

 浮かぶのは、魔力量を表す異世界の数字。

 それを見たレーナは目を丸くする。


「ろ、69000……!?」


 70000近い魔力量。

 先代魔王が召喚したクロディオドラゴンの32万という数字が圧倒的過ぎて少なく思えてしまうが、ホロウド魔法学校の歴代的には上から数えた方が早い。


「チートすぎだろ。」

「あの巨体で69000て……無理ゲー過ぎる。」

「実質一枠だな。出場者一人目はアイツで決定だわ。」


 思ったよりも生徒たちの驚きが少ないのは、途轍もない魔力量を有していることが逆に予想できていたからだろう。

 そして早くも“大会”の出場権の一つを諦めている。


 魔力測定が終わり魔法陣から出てくるオーガロード。

 一歩進むごとに地響きをたてながら、主人であるダインに近づいていく。


「オニオンすごいぞ!さすがは我の従魔だ!」

「グルッ」


 ピョンッと飛び跳ねて再びオニオンの肩に飛び乗るダイン。

 肩の上で彼は嬉しそうに笑いながら、肩をバシバシと叩いている。


「よし!魔力測定終わり!まだ授業は終わりじゃないからね!」


 レーナは生徒に呼びかけ、集まるよう促す。


「残りの時間でやることは、『お互いを知ること』!『共闘術』と言っても、皆が皆同じように闘う訳じゃないからね。


 筋力、体力、種類、魔力量、魔法…………魔獣によってそれらが同じということは絶対にない。

 従って戦闘の形も魔獣によって異なってくる。

 物理的な力で大きなダメージを与えたり、目にも留まらぬスピードで翻弄したり、多種多様な魔法でサポートしたりなど。

 そして、それは生徒も同様。

 魔法が得意であったり、剣術が得意であったり、武術が得意であったり。


「主人と従魔が、お互いに何が出来て、何が出来ないのか?主軸にする攻撃方法は?前衛と後衛はどっち?ピンチになった時にはどう切り抜ける?切り札は?」


 闘う前に、決めるべきことは尽きない。

 互いを知り、連携の仕方を模索し、試行錯誤を繰り返していく。

 積み重なったその先が、主人と従魔の、彼らだけの『共闘』の在り方だ。


「闘い方の前に、まずはお互いを知らないと始まらない!早速始めよう!生徒同士、十分距離を取ってね!理由は分かるよね?」


 “大会”の出場者を決めるために、生徒同士で争う。

 生徒同士の距離が近ければ、その分相手に情報を渡すことになってしまう。

 闘い方がばれてしまえば、対策をたてられてしまうのは当然のこと。

 それは戦いにおいて避けなければいけないということは、これまでの人生の中で戦闘経験が皆無の優斗でも分かった。

 幸いなことに、この校庭は信じられない程に広大だ。

 広すぎるが故に移動手段のため、数か所に転移陣が設けられているほど。

 心配せずとも生徒同士は、十分すぎるほどの距離を取ることができる。


 レーナの説明が終わると生徒たちは、校庭の至る所へ散らばっていく。


「じゃユート、また後でな。」

「うん、またね。」


 セスタは手を振ると、大きなルディの背中に乗って離れていく。

 アンクルも頷くと、ジ・タケと一緒に向こうへ歩いていった。

 しばらくして、その場には優斗とハルだけになった。


「お互いを知ることかぁ。確かに相手のことをよく知らないと連携できないもんね。」


 出会ってまだ一日、時間にすれば半日にも満たない。

 名前と魔力量の他、ハルのことは全く知らないと言っていい。

 何から聞いていこうかと優斗が質問を考えるが、


「ユート。その前に君には魔獣召喚についてもう少し詳しく知ってもらいたい。」


 魔獣召喚は他の“界”から魔獣を呼び出す召喚魔法。

 契約を結んで召喚者は主人、魔獣は従魔となり、互いに契約の証である魔法陣が体に刻まれる。

 魔獣は召喚時間に限りがあり、再召喚にはインターバルが必要になる。


 昨日の話で、魔獣召喚について知ったのはこれくらいか。

 大切なことは全て聞いたように思えるが、他にまだ何かあるのだろうか。



「ユート、君は魔獣召喚によって…………不死身になった。」

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