1章「とおりゃんせ」
「・・・・・・ふぁぁぁー。今日も暇じゃのう・・・・・・」
ある神社の狐の像に、胡座をかき座っている橙色の髪を持つ少女がいた。
・・・・・・
「あれ?辰雄。今日は学校はいいのかい?」
「え? うん。今日はいいよ」
今は大正時代。技術が急に発展した。だが、この村は未だに何も変わっていない。明らかに時代から遅れている。
前に街の方から人が来た事があった。
・・・・・・
「この村はまるで原始時代のようだよ。悪いけど俺はこの村には住めねえな」
・・・・・・
と言われた。
そして、学校にも飽きてきた。前は貧しかったから学校なんか行けなかったからいいけど、逆に友達がいないから暇だ。
だから、最近はサボり癖がついてしまった。
「ちょっと神社の方に行ってくる」
「気をつけるんだよ。最近は神隠しとやらがあるみたいだからね」
母さんはそんなボケているようなことを言っていた。
・・・・・・
「やっぱり綺麗だなあ」
夕焼け空が上がっていた。
僕は今、村の近くの山に来ている。この時間は誰も来ない。
この空は、僕の気持ちを忘れさせて、自然体にさせてくれる。
「さて。帰ろうかな」
そう思い、山を降りようとした時だった。
「・・・・・・あれ? こんな神社あったっけ」
小さい神社が、山道の脇に立っていた。
鳥居には、『遊山神社』と書かれていた。遊山はここの地名だ。
「聞いた事がないぞ・・・・・・」
怪しいと思いつつも、好奇心が勝ち、鳥居を潜った。
「・・・・・・とおりゃんせ、とおりゃんせ、ここは何処の細道じゃ・・・・・・」
鳥居を潜った時、美しい歌声が聞こえた。そして聞いた瞬間に途端と頭痛がしてきた。
それでも歩みは止まらない。止まれない。
「天神様の細道じゃ、ちっと通してくだしゃんせ」
頭が割れそうだ。
「御用のないもの通しゃせぬ、この子の七つのお祝いに、御札を納めに参ります・・・・・・」
声がどんどん大きくなる。これが神隠しか?
「行きはよいよい帰りは怖い、怖いながらも、とおりゃんせ、とおりゃんせ・・・・・・」
ついにバタりと倒れてしまった。これで僕も行方不明の子供達の仲間入りか・・・・・・。
・・・・・・
「・・・・・・大丈夫か・・・・・・お主」
意識が戻った。ここは天国か?
「済まなかったの。怖がらせて」
そして顔を上げる。橙色の長い髪を持つ、頭から狐の耳が生えた少女が僕を膝枕に置いていた。