薬師アムル先生
シュマさん、巫女舞以外に、もう一つやりたいことがあるそうです。なんでも、自分用の巫女衣装を織って作りたいとか。そこで、薬師のアムル先生が呼ばれました。
この方、実は薬師だけでなくカイコを飼い、糸を紡ぎ、染色から機織り、縫製までをこなす万能才女です。
「ああ、薬師の仕事柄、薬に使う桑の木を育てているのよ。そしたら、ついでにカイコも飼っちゃえ、糸が出来たら、染色、機織りも・・・、なんてどんどん広がっちゃって、ハハハ!」
豪快なひとです・・・。
一方、シュマさんは、もぞもぞ動くカイコにぞっこんです。
「あの、白い芋虫が、小さな龍みたいでかわいいの・・・」
うっとりしています・・・。少し変わった視点の持ち主なのですね。
タマキちゃんに聞くと、シュマさんは虫も大好きとか。この二人、面白い組み合わせかも・・・。
早速二人で打ち合わせをして、3月の間に何ができるか確認します。ざっくりみて、織りと縫製、刺繍まで含めてちょうどぐらいかしら? あとは、どれくらい時間を掛けられるかが課題です。機織り機や、糸車など、準備するものを確認していきます。
その話を横で聞きながら、私は、アムル先生が持ってきた繭玉を何気なく手に取りました。すると、
「ひっ!」
「どうしました・・・? あら!」
突然、繭玉が淡い黄金色に輝きだします・・・。
ご、ごめんなさい!
「う~ん、もう一回やってもらえる?」
と言われ、アムル先生から別の白い繭玉を渡されます。
「・・・ひっ!」
手に取ると、やはり淡い黄金色に輝きます。
「面白いわ~。ちょっと調べさせてね!」
と言うアムル先生。黄金色に輝く繭玉を手に、シュマさんを連れて別室へ・・・。
半時程で戻ってくると、面白いわねえ、と繰り返し私の顔を覗き込みます。
最初から黄色の繭玉もあるけれど、黄金色に輝くのは見たことがない、灰で煮て解してみたが輝きは薄れなかった、そうです。
「ねえ、これ全部黄金色に染めてくれない?」
なんでも、シュマさんが刺繍をするのにピッタリの色の糸になるとか・・・。
アムル先生にどっさり白い繭玉を渡されました・・・。はい、頑張ります・・・。
次回、お母様の葛藤、です。