編入生
新しく出来た訓練校の入学式で龍が現れた、と街に噂が広まるのに時間はかかりませんでした。街の人々は、門の前を通るたびに、礼を尽くしてからその場を立ち去るようになります。あの~、ここは聖地ではないのですけれど・・・。
「まあ、生徒全員が目撃者ですからね。ここが龍出現の聖地として崇められてもおかしくないです」
同じ副主宰のリムさんは、事務のアイラさんと話しを終えて、落ち着き払って答えます。
「それよりも別の問題があります。アイラさん、お願いします」
「はい、現在当校へ生徒の編入依頼が約10件あります。そのうち1件は、貴族子弟教育の学校から、生徒を期間限定で預かって欲しいという依頼です」
「え? 当校は、貴族向けの教育はしていないですよね。断れないのですか?」
「それが、その・・・龍を御する方法を学べないかと・・・」
「・・・?」
それは、私のせいなのかしら・・・?
「まあ、これはラシル殿に対応を任せます。残りは次学期か次年度で調整中です」
では、アイラさん、あとはラシル殿とよろしく、と言い残しその場を去っていきます。
どういうこと・・・?
「まあ、さすがに龍を御するなんて、ラシル副主宰以外にはできない相談ですから・・・。あ、残りの編入依頼は、リム副主宰が本国にいるルドラ主宰と確認を取るそうです。それで、その預かって欲しいという生徒ですが、実は、その・・・」
なにやら、アイラさん言いにくそうです。
「王族だそうです・・・」
「はい?」
何やら面倒ごとがまた起きそうです・・・。奥様に相談したら、
「この場所は、元迎賓館だから、このお屋敷のお部屋で面談すれば十分よ。向こうが勝手に来るなら、こちらは普通にしていればいいわ」
いや、そうではなくて・・・。こういうことは当校主宰のルドラさんが対応すべきとか・・・。そもそも、私は王族なんて面識は全くないのに・・・。
あれ? お母様って確か・・・。あ、やっぱりあるかも・・・。
でも、龍を御する方法、ってそんなものあるわけがないのに・・・。王族だから、やっぱり断れないのかしら・・・。
結局、2週後、私は編入希望の生徒である王族とやらに会うことになりました。
何やら、開校早々、問題が舞い込み始めました・・・。