噂
その数日後、今日は、私が挨拶当番で門の前に立ちます。
門の前で皆、恐る恐る挨拶をしてきます。その後、何故か目を伏せ私の横を急ぎ足で通り過ぎる生徒達。その後、逃げるように素早く駆け抜けていくのです。
(これじゃあ、まるで罰ゲーム? まあ、しょうがないか・・・)
諦めて、そのまま挨拶を続けます。
「龍巫女先生、おはようございます!」
ミサトちゃんとタマキちゃんが、お友達と元気よく登校してきました・・・ああ、癒しのひと時です。
あら? お友達がハンカチを落としました。これ落としたわよ、と後ろから肩をポンポンと叩くと、
「い、嫌~!」
お友達は、絶叫しながら振り返りもせず、猛スピードで駆けだします。
後で聞くと、女生徒の誰かが龍の生贄にされる! という噂が密かに信じられているらしいです・・・。
「ミサトちゃん、これ、ハンカチ。お友達に・・・渡してあげてね」
「すみません、渡しておきます・・・」
・・・・・・・・・
挨拶当番を終え、教室の横を通り過ぎます。龍巫女という言葉が聞こえ、ふと耳をそばだてると、
「龍巫女姉様、じゃなくて先生は、龍を昇天させたよ~」
「あ!私、その話きいたことある! 吟遊詩人が語っていたけど、魔物を従えて森に来たの?」
「ううん、違うよ。あの時は、魔物に乗って水場についたの~」
「ま、魔物に乗るの~?」
(タマキちゃん、間違ってないけど、森か水場の違いが・・・。話が微妙にずれています・・・)
「それから、それから?」
「それで、先生が変な座り方していたら、宙に浮いたの~」
「え~?」
浮くの? 飛ぶの? と教室中大騒ぎです。
「タマキ、もういいでしょ」
ミサトちゃんが、止めようとしますが、タマキちゃん食い下がります。
「龍巫女先生、ふわふわ浮かんでいたもん、見えたもん!」
(タマキちゃん、私の意識が体から抜け出したのが見えたのかしら? 間違ってないけど・・・)
「それで、どうやって龍が昇天したの?」
「水場から虹がでて、稲光が光って、森から魔物の大合唱が聞こえて、龍が虹を上っていったの」
「・・・?」
・・・・・・・・
「副主宰殿!」
「ひゃい!」
授業担当の先生から声を掛けられます。
その瞬間、教室の皆が私を見て、「キャー!」と大絶叫。
隣の教室からも、「龍使いだ!」と声がしてみんなが顔を出します。
すみません、授業の邪魔ですよね、戻ります・・・。
次回、編入生、です。