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状態異常回復しか使えないヒーラー  作者: びび びび蔵
1.始まり
2/18

02. 魔の森

街道の先には魔の森があり、その場所には毒の沼が点在し、誰も寄り付かない場所であった。


森の一番大きな木の下にテントを張り拠点とした。


地元では魔の森ならぬ毒の森、聞こえが悪いがルティとしては問題は無かった。


その理由は自分(ルティ)には状態耐性があるのか毒は問題がない。


「今日も毒に犯された生き物を助けに回るかな..」


ルティは独り言を呟きながら、森の西に移動し毒沼の周りに蠢く虫や小動物などにリカバリーを掛ける。


大小様々な虫や動物たちや、その対象が魔物でも片っ端から魔法を唱え掛ける。


日が沈み日が昇る。気が付けばあれから数日経ち、魔法の鞄に入れていた食料も無くなっていた。


「うーん、今日はそろそろ町に戻るかな」


ルティは初め大樹の下にテントを張っていたが、危険がない事が分かると落ち葉の上に寝転がり、それがルティのベット代わりになっていた。


そして夜な夜な訪れる漆黒の毛並みを持つ豹、ブラックパンサーが決まってルティの下にやってくる様になっていた。


この黒豹 ブラックパンサーは毒沼に足を取られ、絶望の淵を彷徨(サマヨウ)っていた所をルティに助けられた。


ブラックパンサー

黒い漆黒の毛並みを持つ黒豹はルティが眠る横で同じように体を押し付け眠っていた。


「うんっ」


安心できる温もりがあり、その日は熟睡し寝坊をしてしまっていた。


「ムニャムニャムニャ」


日が高く昇り、木の木陰(コカゲ)で眠っていたルティに近づく者があった。


ガサッ!


草木を踏む音にブラックパンサーは警戒するかの様に姿を消した。


「おいっ、こんな所に人が倒れているぞ」


大樹の下で眠るルティに駆け寄る者たちは驚きの余り驚愕した。


「なんだよ、この清浄な空間は?」


大樹の下と言うよりも森全体が浄化された様に空気が澄みわたっていた。


この森は昔から「毒の森」として有名で、その森から来た魔物から流行病(ハヤリヤマイ)が流行していた。


「おい君、大丈夫か?」


ルティは肩を揺すられ、大きな声で起こされる。


人がいるとはつゆ知らず、寝ぼけ(マナコ)のルティ。


気が付くと人に囲まれ驚き声を上げた


「どっどうしたんですか?」


周りにいた者達は冒険者で、最近この森の様子が変だと調査依頼を受けやって来たらしい。


以前は毒の臭気が森全体を覆う死の森だったが、今や浄化された様に清らかだ。


「これは君がやったのか?」


森に足を踏み入れ冒険者らは驚きの表情をする。


全ての毒沼では無いが浄化され綺麗になっていたからだ。


ルティが行動した結果が浄化をもたらしたと言ってよい。


東側の森から水を引き、ハーブや特薬草などを植えていた事も良かったのかも知れない。


「しかし、こんな事で毒沼が浄化されるとはな..」


この森は、大樹から西に位置した場所は、毒沼が点在し手が付けられない場所で、其処に入った魔物たちが時折り町にやって来ては伝染病を撒き散らしていた。


そんな事を冒険者たちが話していたが、考えが纏まったのか声を掛けて来た。


「一緒に町のギルドまで来てくれないかな」


ルティは冒険者らに言われるままドンの町の門を潜る。ドンの町はこの辺りでは一番大きな町で人の往来があった。


「着いたぜ」


冒険者ギルドの戸を潜ると、何人もの冒険者で埋め尽くされ賑わいを見せている。


「君はギルドカードは持っているかい?」


ルティはカードを提示する。


「ほう君は治癒士か」


簡単なやり取りをし奥の部屋に通される。


部屋の真ん中にテーブルとソファーがあり、手を差し出された。


「どうぞ」


一緒に来ていた冒険者らは恐縮した様に小さくなる。


其処に凄みを利かした男が入って来た。


「お前か最近たびたび、魔の森で人影を見たと言う奴は?」


部屋に入るや否や怒鳴る様な声で挨拶をして来た。


「ドンの町 ギルド支部長のドックだ」


ルティも釣られて挨拶をする。


「それで本題だが、魔の森でどんな活動をしていたのかな? 君は冒険者Fランクの筈だが、あの森は最低Dランクほどの力を有する場所だ」


ドックは物事の説明を促す様にルティに回答を求めて来た。


それに対してルティは、今までの事や森での事などをドックに報告する様に言いギルドを後にした。


(こんな簡単で良かったのかな? あれこれ聞かれたけど何もなかったしね)


ルティは身の回りの物を買い込み、もう一度ギルドに立ち寄った。


販売の為に持って来ていた薬草などを、ギルドに預けていたからだ。


最近、魔の森では薬草などが生え始め、それを摘み採取していた。


ギルドのカウンターにルティが近づくと、担当してくれた受付が声をかけて来た。


「お待ちしていました。先ほどお預かりした物の精算が完了しました」


ルティはカウンター越しに肘を突き、精算金を受け取ろうとしたところ驚きの表情に変わる。


「買取り料金は6000ギルになります。それとこちらの依頼の金額も入れまして合計10000ギルです」


「今回の依頼でルティ様のランクが一つアップしましたのでEランクとなります」


驚くルティの横から鑑定士が声を掛けて来た。


「よく手に入ったな、このアイテムと薬草もこの辺りでは手に入らない物ばかりだ」


鑑定士のオヤジはルティの背中をバンバンと叩き親指を立てる。


「また頼むぞ!」


ルティは買取り伝票を見ると驚いた。


・青ハーブ 5ギル

・赤ハーブ 5ギル

・特薬草  300ギル

・マジックハーブ 200ギル

・蝶の羽 100ギル

・賢者の枝 1000ギル

・ガルーダの羽 2000ギル


依頼内容

・青赤のハーブの採取

・マジックハーブの採取

・蝶の羽集め


適当に道具袋に詰め込んでいたので、何が一番多かったのか分からないが、目に付いたのが賢者の枝とガルーダの羽だった。


こんな物を道具袋に入れたかと思いながら、ルティはギルドを後にした。


太陽が沈み出し辺りが真っ赤になる頃、ルティは急いで森に帰っていた。


(時間をかけ過ぎた)


魔の森の入り口に差し掛かった時、樹々がザワザワと揺れだした。


樹々の間から何かが飛び出たと思うと、ルティに覆い被さった。


わっ!


驚きの余り腰に佩いている太刀を手にするが、迎えに来たブラックパンサーだと分かった。


「ごめんごめん、ただいま」


そう声を上げると、ブラックパンサーは甘える様にルティの顔に(ホオ)ずりした。


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