裁かれる時
このままずっとここにいてもしょうがないので、扉を開けることにした。呼吸を整え、ゆっくりとドアノブを回す。扉を開けた瞬間光が視界を埋めつくし、そこで俺の意識は消えた…。
「おい、起きろ。起きないと耳取るぞ!」
ん?今とんでもない言葉が聞こえたような…。痛っ!耳に鋭い痛みが走る。これは本気のやつだ!
「起きます起きますだから耳は取らないで!」
「やっと起きたか。そろそろ時間だ、行くぞ。」
そう言って寝起きの俺を連れていこうとするのは誰だ。ようやくハッキリ見えるようになり確認すると、俺は絶句した。
なんとそこには黒のローブで全身を包み、顔にKSと書かれためちゃくちゃダサい仮面を付けている、明らかにやばい奴がいた。あまりの姿に衝撃を受け、抵抗することなくどこかに連れて行かれたのだった…。
はっ!?正気を取り戻した時には遅かった。周りを見渡すと、沢山の人がいた。しかも全員あの黒ローブとダサ仮面を付けている。思わず笑いそうになりながらも俺は尋ねる。
「これ、どういう状況ですか?」
え、なんかみんな真顔なんだけど。怖。なんか言えよ。ビクビクしながらも誰かが喋るのを待っていると、奥で1番偉そうにしている人が机をドンドンと叩き、口を開いた。
「これより、犯罪者審判を行う。まずは容疑者への質問を行う。担当の者はあまり時間をかけずに頼む。まだ後が沢山いるのでな。」
ん?どうゆうこと?犯罪者審判ってことは捕まった??困惑してる間に大勢の不審者(見た目が完全に不審者のためそう呼ぶことにした)
の中から1人がこちらに近づいてくる。
俺をここに連れてきた奴とは違うようだ。と言っても体格でしか判断出来ないが。
「それでは容疑者よ。まず犯罪者審判とは理解しているか?」
「全く分からないです。教えて下さい。」
ここで逆らったりすると不味そうだし大人しく従っとくか。ただ敬語とかあまり使ったことがないから使えるか心配だ。
「ふむ、一応聞いておこう。犯罪者の定義とはなんだ?」
「定義、ですか?」
「そうだ。これをしたら犯罪者のようなものだな。」
知らねぇぇぇぇ。なんかこの人、知ってるだろう?みたいな雰囲気出してるけど全然知らないんだが。
「…ら……い……です。」
「ん?何と言った?もう1回言ってくれ。」
「知らないです!!」
あー言っちゃった、恥ずかしい〜。この人だけじゃなく周りの不審者達もえっマジで!?みたいな感じでこっちを凝視してるし。
「そ、そうか。そういうこともあるのだろう。では犯罪者の定義について説明しよう。この国、正義奴国では国民が守らなければいけない正国法がある。正国法には810条の項目があるが、それはあくまで全部数えたらという話で普通に生活していたらなんの問題は無い。犯罪者に関係するのは114条だけだ。ここまではいいか?」
「はい、何となく。」
696条も犯罪者とは関係ない方があるのか…。一体どんな法何だろうな?696条もあるんだし朝食を必ず取らなければいけないとか朝6時には起きなければいけないとか?さすがにないか。ないよな?
「では犯罪者に関係する114条の法にはある共通点がある。それは、人に危害を与えてはいけないという点だ。つまり、人に優しくしていれば基本的に犯罪者になることは無い。だが、犯罪者になれば市町村に各々いる国の犯罪者関係を扱う機関、通称犯罪者管理機関と言うが、その機関が全体に連絡する。まぁ多くの人は長すぎてもう1つの名前で呼ぶのだがな。KSと言うそうだ。なぜKSなのかは分からないが何故か口に馴染むそうだ。」
「ということはあなた達はそのKSとやらだと?そして犯罪者かどうかを判断するためにこの犯罪者審判をしていると?」
「察しが良くて助かる。今回はたまたまお前が犯行に及んでいたところを見ていた人から通報を受け、急遽駆けつけたところお前が倒れていたという訳だ。通常事件が起きたら犯罪者と思わしき人物、またはその関係者をKSを通じて写真付きで指名手配するのだがな。お前の関係者が居ないということで指名手配はせずに直接お前から聞こうということになったわけだ。」
本人達もKSって言うのか。もう名前変えれば?絶対名前言うの面倒臭いって思ってるだろ。まぁそれは置いといてだ。なんか関係者がいないって言われると悲しくなってきた。
「今は犯罪者審判をする前の常識の確認みたいな感じですか?」
「そうだ。前にそれをせずに話が通じなかったことがあり、それ以来毎回犯罪者審判の前に確認をするようになった。常識の確認は出来た。これから犯罪者審判が始まるわけだが嘘は吐かない方が身のためだぞ。犯罪者審判をする時に嘘を見抜く事が出来る奴が絶対に2人はいるからな。何か抵抗するような仕草を見せるのもダメだ。もし怪しい動きをするなら周りの奴らがお前を押さえ付けるだろう。」
「なるほど。忠告ありがとうございます。」
話は一通り終わったと思っていいのだろうか?それにしても嘘を見抜く事が出来る、か。そいつが嘘を吐くことはないのだろうか?聞いてみるか。
「話は大体分かったな?最後に質問等はあるか?無かったら犯罪者審判が始まるが。」
「あの、嘘を見抜く事が出来る人が嘘を吐くことはあるのでしょうか?」
「それはないな。もしそいつが嘘を吐こうとした場合、体に激痛が走り嘘を見抜くことが一生出来なくなる。質問は終わりか?」
なるほどな。とりあえず犯罪者審判とやらをするか。もしかしたら早く抜けられるチャンスかもしれない。ここで弁明することが出来れば……。
「はい。これからすぐ犯罪者審判は始まるのでしょうか?」
「そうだ。私が元の場所に戻ったら始まる。上手くやれよ。」
そう言って俺の肩をポンポンと叩くと不審者集団の方に戻って行った。なんか知ってそうな感じだったがこちらの事情をある程度知っているのだろうか?それなら話は早い、案外簡単に弁明出来るかもな。
そして、またドンドンと机を叩く音が聞こえた。
ついに、犯罪者審判が始まった。
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