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社会的にゲームオーバーな異世界転移



80%


皆さんはこの数値に心当たりある方はいらっしゃるでしょうか。それは私立アカツキ帝王高等学校の生徒に行ったアンケート回答結果だ。


Q あなたは一次方程式の解き方が分かるか?

A NO,


上記のアンケートを行った結果、上記の答えが返ってきた確率だ。残りの20%も二次方程式で同じ質問をすれば基本的には潰れる。


信じ難い結果だ。

学力だけでは無い。学校内の治安もネットで騒がれる程の悪評を轟かせている。

俺の知り合いや担任だった教諭も皆こう言っていた。


「異世界級」


校内にはヤンキーがふんぞり歩き、野球部も無いのに金属バッドがゴロゴロ転がっている。

数ヶ月前にヤンキー同士の抗争がこの学校で勃発し、300人近くの負傷者が出た、なんて騒がれたくらいだ。

まあ……当然ながらそれはデマだし、直ぐに収まった。


だが、わかって欲しい。そんな噂さえもつくられるのが躊躇われない、許容されるLv.の学校なのだ。


間違いなく、青春そのものも黒歴史になる。いや、返り血で赤歴史かもしれない、なんちゃって……前置きはこの程度でいいとして。



唐突だが、偏差値70の俺、西條悠理はこの学校に在籍している。本校、唯一無二のエリートである。


――数ヶ月前 三者面談。


「流石西條君。このまま行けば県内トップ校も入れるよ。このまま精進しろよ。」


担任の先生が舌づつみを打つように言ってきた。それを聞いて、喜ぶお母さんの笑顔は見ていて心が弾む。


「はい!頑張ります。」


順風満帆、狙っていた通りの学校へ行けそうだ。


――エリート高校へ進学しそのまま有名国公立大を卒業、晴れて大手企業に勤める。1点の曇りのない人生を行くために俺は順調に駒を進めていた。


中学入学当時は成績もイマイチで、最初の頃はそれこそ行ける学校があるならそれでいい、くらいで考えていた。多分みんなそうだったと思う。

けど、中2の初め頃、切磋琢磨に勉強し始め、県内トップ校にもA判定がつくほどの学力をGET! 数値で表せば偏差値70。

――もう一度言う。全てが順調だった。


だが、ある日そんな俺の人生に()()が起きる。

そう、俺が()()()()()されたのは一瞬の出来事だった。



「ふぅ。疲れたぁ~」


1月上旬、体をしきりに震わせるような、冷たい風も積もる雪も去年とさほど変わらない様相だ。

急激に変わったのは俺の部屋の熱気だけだ。


私立高校入試までは残りⅠヶ月。ついに勉強も大詰めに差し掛かっている。今日は過去問をひたすら解いて、解説を見る、それの繰り返しをしていた。

何やかんや俺にはそこまでの余裕がなかった。なんなら、少し焦っている所もある。

新聞の掲載によると、今年の俺が受験する高校の倍率は2倍近くあったらしい。偏差値が高い上にこれだけの倍率があると、流石の俺も手を抜けない。


楽して受かろう。などと考えて勉強を少し疎かにすれば、ほんとに落ちる可能性がある。


俺がいる合格圏内も、絶対の保証はないのだ。

だが、むしろそれが良い。

ギリギリの駆け引きの中で戦うからこそ、意味がある。この倍率だって、例年の倍率結果からある程度予想はできていた。


「トイレ」


ずっと座っていた為か足が痺れる。尻も痛い、集中してたからどれだけの時間こうしてたのかもはっきり分からない。

トイレでも、大の方だ。

座っている間に時間もある。改めて、自分の受験する2校を調べておこう。


「うーん。この高校も悪くはなかったな……けど国立大学進学率がな……。」


トイレの中で唸る。今更ながら、1個で決めて私立推薦にしなかったのを悔やむ。

俺は私立2校を受験するのに、公立は受験しないという極めて異例な選択をした。

親は快く受諾してくれたから、そんなに不安には思っていなかった。だが、私立推薦の方がどれだけ楽な選択か、今際の際で思い知る。

あの時はひとつに決めるのが怖かった。


偏差値で並んだランキングをスクロールして眺める。


「ん?」


目が釘付けになるような、異常な数値を示す学校があった。


私立アカツキ帝王高等学校。偏差値33。

名前からして、いかにもって感じだが、ここまで低い高校は初めて見た。


"評判について"も軽く目に通したが、褒めているコメントはほぼ存在しない。ほぼ全員が「異世界級のBAKA高」 「未来はコナイ」 「前科が無きゃ校門潜れない」 ……こんな感じで揶揄していた。

だが、下の方を見ると、褒められてたものもあった。「美少女しかいない☆」 「女子の顔面偏差値は以上に高い」


女子が可愛いなら、まあいいんじゃね?そんな楽観的な気分になる。……少し興味湧いてきた。

連日の勉強づくめの息抜きには丁度良いかもしれない。一旦ここのウェブサイトへ飛んでみるか。

俺は偏差値ランキングサイトに貼られたULRから私立アカツキ帝王高等学校の公式サイトへ移動する。


「へ~こんな感じなんだ。」


公式サイトには、私立アカツキ帝王高等学校と大きく書いてあり、そのバックには清潔感のある白い校舎が映されている。

ドローンから撮った写真も下に載っている。

下の方には学校内の特別施設や行事を必死にやる感をアピールした生徒達の体育祭写真などが貼付されている。


なんだ、意外とちゃんとしてんじゃん。 ……いや、待て。なんで学校の窓ガラス全部割れてんだよ。しかも、なんで小学一年生で習う漢字も読み仮名付いてんだよ。

俺は立て続けに苦笑した。するといきなり


ピロン♪


ん?

LINE♪みたいに軽快な電子音が突如として鳴った。

なんだろ。

画面の中央に新たな文章が表示されていた。

俺は少し当惑しながらも、その文を目で読み進める。


「貴方様はこのウェブサイトのアクセス数ちょうど10万回目に御入室されました。大変おめでとうございます!!……所で異世界転生て憧れるよね?」


謎の文章に俺は不可解さを抱き、顔を顰めた。

なんだこれ、イタズラかよ。

馬鹿らしく思い、このサイトから抜けようとしたその瞬間――――携携帯の画面が激しく光り始めた。そして、その光は俺の顔目がけてド直球にぶつかってきた。


は?

携帯を手放そうとしたが、間に合わない。俺の視界は純白に呑まれた。

視界はそのまま眩さに包まれて、意識は逆に暗黒へ引きずり込まれた。



「お目覚めかな?」


近くから声が聞こえた。はっきりは聞こえないけど、男の声だ。ここはどこ?


「あー、西條君。聞こえてるー?おーい。」


ん?名前呼ばれてるのか……


ジャキン


ーーーーーーえ?


頭に冷たくて、硬い"何か"が当たる。だが、それは何か分からない。目隠しでもされているらしい。目は開けてるのになんも見えない。

シュルシュルと布が緩くなっていく音がした。そして、目の上の圧迫感は徐々に薄れていく。


視界が明瞭になった。


「すいま――」


絶句した。俺の頭に突きつけられていたのが、"拳銃"だったことに。

えっ。これって……


「おはよ★」

「ほわぁぁっつ!?」


反射的に叫んでしまった。目の前に居る男、誰?! ここ、どこ!? なんで銃があんだよ、殺されんの?


氷解するように、一瞬で感情が爆発した。声を上げたことにより、恐怖が実感となって俺を襲ってきた。

ひたすらに俺の頭に疑問符が駆け巡る。What when which why however……てこれ疑問符じゃねえや。

周りは白っぽい銀色に包まれた"異空間"とも名状出来る。近しいもので表せば、アルミホイルに包まれた空間みたいな……うんそんな感じ。


「西條君だよね? 10万人目おめでとう! 単刀直入に言う。進学先を変えてもらうよ。」


へ?なんだよ一体……


「君は私立アカツキ帝王高等学校の生徒として3年間を送って貰う。」

「は!? ふざけんな――」


チャキ


「んでもないです。」


いやいやいやいやいやいやいやいや。おかしいだろ、なんで俺がそんなDQN高校に行かなきゃなんねえんだよ。

突如降って湧いた理不尽さへの怒りを耐え凌ぐ。

男は銃を一旦仕舞いながら言う。


「勿論、タダではないよ。目的を達成してくれたら、ちゃんと賞金を与えるよ。ちなみに10億。」

「10っ億!!?」

「そう。あと、この学校に入学したら、この3年間にかかる経費は全額こちら負担にしておくよ。だから、君自身にかかる負担はZERO☆ マイナスになる事はひとつも無い。」

「いや、こんなDQN高校入った時点で思いっきりマイナス値――」


チャキ。懐から銃口が向けられた。


「精一杯精進させて頂きたく思います。」

「話が早くて助かるよ。」


殺してえ~でっかいハエ叩きでこいつを叩き殺したいんだけど。心底思う。

そんなどす黒い情動を口に出さないように抑えながら、ふと思った。


「おい、どうやって進学先変えるんだよ。願書は既に出しに行ったんだぜ、"偏差値70の私立高校"によ。」


今のは全力の皮肉だ。

だが、目の前の男はそれをすまし顔ですんなり答える。


「あー安心していいよ。それはこちらで燃やしておくからさ。」

「燃やすの!?」

「あったり前だろ☆ そんなクソ高校への醜い願書なんて、俺が生み出す聖火で塵に返してあげるさ。」

「あんたそれ絶対頭いい高校への嫉妬だろ――」


ジャキン


「サンゼルス。」


そそ、ロサンゼルスよ。ロサンゼルス。きっと私立入試で出るからちゃんと言えるようにしないと。


「では、4月4日の私立アカツキ帝王高等学校の入学式にて、君を待つよ。来なかったら、俺のファイアードラゴンで家ごと燃やす★ 」


……こいつ、正気の沙汰じゃねえ。


「あと、受験はしなくていいよ。君は新一年生として、編入してあるから。詳細は手紙でまた送るよ、それじゃ。」

「いや待てよ――」


言いたい放題言いやがって、俺にもまだ聞きたいことが―――………



俺は気付いたらトイレに居た。しかも、ちょっと漏らしていた。



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