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ふたりの天下人ー西播怪談実記草稿から紐解く播州戦国史ー  作者: 浅川立樹
第八章・播州鬼騒動六【天文二十二年八月十二日(1553年9月19日)~】
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10・播州鬼騒動六5-1(菅生表の戦い)


 ― 5 ―



 同、九月三日(1553年10月10日)、夜。



 ついに菅生表の戦いは最終局面を迎える。


 先に菅生表の前線に到達したのは晴政派の姫路小寺氏の先陣・小南与三(こみなみよぞう)らの部隊だった。


 置塩城襲撃の報を聞いた小寺氏は、急遽動員をかけ、重臣・黒田職隆(くろだもとたか)を大将とした援軍を書写街道から北上させていた。そのため、寸でのところで置塩城側の戦線崩壊を阻止できたといっても良い。


 小寺軍は、直接総領家の救援に向かわず、伝令が到着したのと同時に七条隊を援護するために進路を変え、兵と兵をぶつけることを選んだ。


 小南氏は、もとは印南氏という。赤松家重臣・小寺氏の配下でかつて赤松氏が栄華を誇っていた頃、戦場で大功を立てたことで小寺氏より一字を賜り、小南氏と名乗るようになったと伝わる。


 先駆け衆たる小南隊の活躍は目覚ましく、粉骨砕身の奮戦ぶりに、赤松総領家の軍勢が到着したと思い込んだ宇野勢は後方の菅生集落まで戦線を引き下げた。


 小寺氏の本隊が到着した後は、攻守が逆転。菅生集落の西側全体が戦場となり、松明や篝火のわずかな灯りを頼りに、両軍は激しく入り乱れた。押しつ押されつ、民家の影と夜の闇を味方に、影から影へ斬り結ぶ白兵戦が各所で繰り広げられ、戦場の華となる。


 やがて、しびれを切らせた誰かが集落に火を付けたことを皮切りに、急襲の利を失った宇野の軍勢が撤退を決めたことで合戦は収束していく。菅生から宍粟までの道中は雑木生い茂る山間の林道となり、まだ細い三日月の光では暗路に追撃を仕掛けるほどの理はない。


 深追いの愚を知る七条・小寺軍も追撃を断念し、鞍掛山の赤松家陣地へと引き上げる。


 西部の友軍主力の襲撃が失敗に終わった事を知った恒屋軍も、間もなく置塩城北から兵を引き上げ、防備をかためた恒屋城での籠城を始めた。


 赤松総領家は春以降に起きた尼子軍侵入の傷が癒えておらず、混乱する味方諸侯の収拾で手一杯。意気揚々と城内に退いていく恒屋勢を、当主・赤松晴政は夢前川の対岸から眺めることしか出来なかった。



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