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ふたりの天下人ー西播怪談実記草稿から紐解く播州戦国史ー  作者: 浅川立樹
第八章・播州鬼騒動六【天文二十二年八月十二日(1553年9月19日)~】
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10・播州鬼騒動六4-3(菅生表の戦い)


 情勢は、刻一刻と変化を見せる。

 

 正面突破が難しいと判断した宇野兵は隊を二つに分け、分隊を側面に配置し、正満らを台地の上に足止めさせ、本隊は門を迂回。七条隊の殲滅に固執せず、裏切り者の宇野刑部を弑さんと赤松総領家領内への侵入を試みた。


 正満としては判断は迫られる。


 地の利を捨て、宇野の軍勢を追うかどうか。


 刹那、もはや自らが防波堤にならないと踏んだ正満は、門を打ち出で、残存兵力で宇野の別動隊に一太刀入れる事に賭けた。


 これまでの戦いからして、この西側からの軍勢が敵主力なのだと想像がつく。


 形勢は不利、一発逆転の目はない。しかし、人はただ死するよりも名を惜しむ。例え幽閉されていようと、自分は最期まで七条家の人間なのだと、猛る武者(もののふ)四、五十騎従え、正満は颶風(ぐふう)と化す。


 咄嗟の出来事に、宇野の最前列が乱れた。慌てて突き出す槍の穂先を蹴り飛ばすと、正満は包囲の一段目を斬り崩し、戦線に楔を穿ち抜かんと遮二無二吶喊する。


 せめて、敵将の首級(くび)ひとつ、獲らねばならぬ、狩らねばならぬ。


 今まさに、坂を駆け上がらんとする宇野兵の背後からがしりと右腕を突き伸ばし、首の骨を折らんと組み伏せたところで、正満が大きく咳をする。


 鷺羽の矢。一条の流れ矢が正満の喉輪(のどわ)を貫き、彼の気管を破壊していた。


 たちまち昏倒し、膝から崩れようとする指揮官の首級を獲らせまいと、仲間の七条兵らが両脇を支え、なんとか再び門の中へと運び込もうとする。もうよい、もうよいと正満も声を出そうとするが、潰れた咽喉ではひゅうひゅうと風が漏れ出るばかり。


 薄れいく意識の中、正満は、確かに宇野の先駆けが坂下へ弾け飛ぶのを見た。


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