表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふたりの天下人ー西播怪談実記草稿から紐解く播州戦国史ー  作者: 浅川立樹
第七章・播州鬼騒動五【天文二十二年(1553年)~】
79/277

09・播州鬼騒動五3-2


「過去の権威は、最早断ち切れぬ呪縛と変わらぬ」

 

 なぜ今更、愚鈍な赤松晴政などという選択肢を選んでしまうのか。


 刑部少輔は逃亡。赤松総領家に庇護を求め、置塩の町に逃げ込んだのだという。

追っ手を送ろうにも置塩では、安富の安志加茂神社を挟んで、北は夢前(ゆめさき)の、南は菅生(すごう)の赤松方の関所に感知される。宍粟郡から置塩までの道行は、比較的道の良い夢前方面から古知之庄を経由すれば徒歩で三刻(約6時間)ほどの距離ではあるが、本拠地に近づけば近づくほど赤松軍の警備網も増えていく。


 最低でも刑部少輔の首は欲しいが、素直に渡してくれるほど総領家も阿呆ではない。


「ならば、力攻めに頼るしかあるまい」


 置塩城周辺の幾重にも築かれた城塞群を突破するならば、宇野氏にとっては総力戦になる。


 隣国但馬の山名氏はこの十年来、順調に生野の銀山開発を進めているとも聞いている。山名家当主・山名祐豊は野心家で、先祖が嘉吉元(1441)年より長享二(1488)年まで領していた播磨国に返り咲く夢を捨て切れていないという情報もある。


 手薄となった宍粟郡に、山名の軍勢が侵入する可能性は大。


 北の守りとして、一宮三方荘の田路(とおじ)氏や安積(あづみ)氏らの協力は必須となる。

 

 宇野氏と三方東郷の田路氏との関係は良好。田路一族全体ではやや赤松総領家に与する方向に傾いているが、表立って宇野氏と敵対したいとは考えておらず、臣下の田路隠岐守胤純(とおじおきのもりたねすみ)との縁を紡いでいけば、事と次第によっては共闘への期待が持てる。

 

 一方、三方西郷の安積氏はといえば、今も昔も赤松総領家に忠義を誓い続けている。宇野氏との関係は付かず離れずで、政頼自身、刑部少輔を置塩へ逃がした手引きをした者が安積氏家中の者と言われれば、やはりそうだったかと頷ける程には()の一族とは生存戦略に隔たりがある。


 だが、政頼の手からは既に賽が離れている。

 

 最優先すべきは、失われた尼子家の信頼を取り戻すこと。

 

 腹が決まると後は行動に移すのみ。間もなく宇野氏の領内では宇野刑部少輔を討伐するための動員が行われ、赤松総領家にも形式だけではあるが、刑部少輔を引き渡せば置塩城への侵攻を諦めるが如何するかという旨の通達を送り届けた。


 結果には、目を通すまでもない。分かりきっている。


 当然のごとく、赤松総領家・赤松晴政からの返答は、否、だった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ