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09・播州鬼騒動五1-3
「情勢を鑑みるに、播備作どの国内も敵味方の定まらぬ状態にある。尼子の大軍勢相手に我らが再度結束する必要があるのは皆が理解しているが、どうすればいいかが検討もつかぬ」
誰が旗頭となるか。政元ら七条家からすれば赤松総領家が相応しいと考えるが、物量的にも力量的にも勝る浦上宗景を納得させられるとは到底思えない。彼らは備前国を、否、浦上氏を浦上家として一戦国大名としての独立を果たしたいと考えてる。
折り合いがつくはずがない。だが一方で、今までのようなばらばらとした同盟意識のようなものだけでは、やがては各個撃破される運命しかないのも分かっている。
目に見える形がなければ、播磨も備前もまとまれないのだ。
「折衷案がないならば、誰かが何かを造りださねばならないのだが……」
その肝心の一手を誰もが欲するのみ。
しんと静まり返る七条家家臣団の耳に、浦上宗景の屋敷に捕縛された鬼が運び込まれたという報が入ったのは、会議から二日後の七月十六日(1553年8月24日)の事だった。




