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ふたりの天下人ー西播怪談実記草稿から紐解く播州戦国史ー  作者: 浅川立樹
第七章・播州鬼騒動五【天文二十二年(1553年)~】
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09・播州鬼騒動五1-2


「父上、浦上殿は不可解な行動を取られていましたが」

「……既に草の者には走らせておる。今は情報を集める時期だ。少しは兄を見習え」


 疑念を持てばいかようにも不快な未来予想図が浮かび上がる。一方で初陣を華々しく飾れなかった三男・政直は不満そうに次は何をするのか次を何をするのかと責っ付く。老兵らに混じり昔語りを聞くのは良い事ではあるが、彼らの口にする言葉の上の戦場では皆が英雄になる。現実の怖さも併せて知らねば、将来危ういことに繋がりかねない。


「政範、お前はどう思う」


 先程から、彼の次男は少し遠くの視点でこの話し合いを俯瞰していた。


「北の雲州尼子殿、西の備前衆含め浦上宗景殿、東の広瀬宇野殿、南の室津には浦上政宗殿、全てを同時に相手する道理はありませぬ」


 勢いの強い北部の助力を仰ぐ東部と南部に対し、圧倒的小勢の佐用勢に取れる選択肢は限られる。


「西の宗景殿の話に乗る以外に手段はないでしょう」

「しかし、我が家にも面子はある」


 置塩の大殿に無断で宗景軍と繋がることは越権行為になる。また、つい先日まで赤松総領家の重臣を務めながら離反した浦上政宗や宇野氏と志を同じくすることは道義的にも感情的にもあり得ない。


「待つ、という点では父上と同じですが、宗景殿の提案には一理あるとも思います」


 彼等もまた、備前国内の敵と戦いながら、備中三村氏や尼子氏などの敵対勢力の侵入を防ぎ、尚且つ実の兄を敵に回しながら生存の道を模索している。


「やはり宗景殿と一時休戦するしかないでしょう」

 

 その間に、龍野の赤松政秀や姫路御着の小寺政職の了解を取り、置塩の大殿赤松晴政からも同盟を結ぶ旨の同意を得られなければならない。斜陽の赤松総領家を支える佐用七条家として出来ることは主従関係をぶれさせないことが求められている。


 先の三月、勝山から高田表にかけての戦いでは、政元ら西播磨諸侯も備前勢との一応は共闘し、播備各所で協力し合った。複雑ではあるがそれも戦国の世の倣いではある。


 世の道理を学んできていると、政元は次男の成長に内心で喜ぶ。戦略眼もなかなかに良い。

 息子達の今後の筋道が見えてきたところで、しかし、と政元が言葉を少し割って入る。


「しかし、すぐ手を結ぶには些か当家に不利といえよう」


 敵の敵は味方。その論理ではあるが、浦上宗景は二十半ばの男盛り。あの尼子を敵に回そうとする道を選んだ人物だが、彼の中での七条家の立ち位置に迷っている節が見受けられる。


 政元の義父佐用則答の叔母は宗景の父村宗の室であり、義理の叔父佐用元信の室には村宗の女が嫁いでいた過去がある。


 その上で、佐用家は享禄四年の大物で、間違いなく赤松総領家の晴政に付き従い、村宗を大阪の渡辺川に討ち沈めている。


 そして今日がある。

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