03・雲州尼子大東征3-2
「という次第で御座います」
「……そうか、ご苦労だった」
途中から、晴政はうんざりとした気持ちで男達の話を聞いていた。適当過ぎた抵抗も、尼子側への義理だかららしい。結局の所、彼らに共通するのは尼子統制下の政治に耐えきれず、離反を申し出た者達だということだけだった。
まるで風見鶏。昨日はあっちで今日はこっち。明日の行方は風任せ。
適当に金子を渡すかたちで、晴政は男の話を終わらせた。
「時に、この辺りで陣の張れる場所はないか。可能ならば兵が休める開けた場所が良い」
「それならば、私どもの出城をお使い下さい」
「…………」
結局、男の厚意を無下に断ることも出来ず、同盟軍は案内されるまま、近くの丘陵地を利用した砦を拠点として陣を張ることにした。
近くには小河が流れ、冬場にも関わらず凍っておらず思いがけず飲用水を得た。
だが、あまり悠長に過ごす時間はない。
彼らは大急ぎで陣を張り終えたが、その時には既に夕刻となり、今日一日の進軍はこれまでとなる。
直線距離では数里しか進んでいない。しかし、何とも言い難い疲労感だけが残る一日だった。
ふと気がつくと、いつの間にか男達は陣中から姿をしていた。
晴政達は急いで追手を向けたのだが、男達は行方を眩ましたまま、再び彼らの前に姿を現すことはなかった。




