表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート

あのころの雪、今の雪

作者: 白宮 安海

埼玉では珍しく降り積もった雪に、ぼくは悪戦苦闘していた。長靴も履いてこなかったぼくの足は、靴下の中までびっしょりと凍えている。

家まで後もう少し。痛くなる足をがんばって、前へ進めた。すると、白く濁った風景の奥で、誰かが僕に手を振ってくれた。

「まさし。まさし」

聞き覚えのある声に、ぼくは一瞬で痛みを忘れた。

雪煙の中から姿を現したのは、ぼくのお母さんだった。

ああ、こんな風に、お母さんはぼくを迎えに来てくれた。

ぼくが、冷たそうにしていると、お母さんは、「まさし、かわいそうに。冷たかったでしょう?」と言って、手を繋いでくれた。

ぼくはそれが、すごく嬉しかった。もう足の冷たさよりも、お母さんの手の温もりの方が強く感じた。


どうして、お母さんは、いつも厳しいのに、こんな時は優しくしてくれるの?

浴槽の中で、思い出が蘇り、僕は涙を零した。

いい思い出程、後に思い出して、今を後悔する。


風呂から出ると、一本の留守電が残っていた。

僕は、受話器をとると、留守電のボタンを押した。


「まさし、元気してる?風邪でもひいてない?今度、実家に戻ってきなさいよ。待ってるからね」


伝言が終わり、ピーという音が鳴った。

僕の目からは、少しだけ涙が零れた。


今度会った時は、お母さんにとびきり優しくしよう。

そしてたくさん会話をしよう。

幸せはいつだって、手の届くところにあって、気づかない。

お母さん、また会いに行くよ。


窓の外に目をやると、雪が降っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ