夢のなか
ふと思い付いてリハビリも兼ねて投稿しました。
連載しているお話はもう少しお待ちください。
最近、夢を見る。
普段から夢は見る方だが、はっきりと覚えているようなものはほとんどない。
だけど、この夢の事だけはなぜか頭から消え去らずに残っている。
夢のなかでの僕は高校生、ということになっているみたいだ。
骨折したのか、右足にギブスをして車イスに乗っている。
夢の場所は病院なのだが、地元の病院ではなく、記憶にあるどの病院とも違う気がする。
そもそも、自分自身も現実の私とは違う人間だと思う。
思うのだが、それと同時に自分自身だという感覚もある、そんな不思議な夢だ。
そこで僕は、いつも君を待っていた。
病院は酷く退屈で、大部屋なのに患者は僕一人。
時間を潰すための本はすべて読み終え、やることもなくただ毎日を過ごすしかなかった。
夕方になると現れる君に会えることだけが、唯一の楽しみだった。
そんな気がする。
君と僕はとても親しいようで、いつも楽しそうに話をしている。
私にはその声は聞けないが、僕に向かって嬉しそうに話しかける君を見ているのがとても好きだった。
君は毎日僕の所へ現れては、今日何があったかを話してくれる。
私にその声は聞こえなくても、僕を通して、分かる気がした。
本当に楽しそうに話す君を見ていると、僕も、そして私もとても嬉しくなってくる。
きっと彼女の周りには幸せが溢れているんだろうと、そう思えた。
そうした幸せな日々を過ごしていたが、ある日僕の容態が急変した。
声の聞こえない私には分からないが、僕は何か病気だったのかもしれない。
泣きながら何かを話す君がいる。
きっと僕も何かを君に伝えようとしているのだろう。
君の声が聞こえないことが、とても苦しい。
最後まで君には笑っていて欲しかった。
きっと、僕もそう思っていたんだろうと、私には感じた。
気がつけば、僕は大きな樹の下に居た。
地平線が見えるほどの大きな草原に立つ、とても大きな樹の下に。
横には少し大人びた雰囲気の君がいる。
そして、何時ものように、何かを楽しそうに話していた。
僕も、何時ものように、君の話に耳を傾ける。
そういう、幸せな場所に僕たちは居た。
これは、私ではない僕が過ごした、とても幸せで、どこか切ない物語。
そんな、夢のなかのお話です。