プロローグ
平和な世はとうのむかしに終わりを告げた。
戦争や紛争が世界から消え去って10年。世界各国に、発達した技術が介入し、人間に便利な町が急速に形成されていった。
水も、空気も、食料も、衣食住のすべてが保証され、人々は快適なぬるま湯につかっていた。
だが、それも長くは続かなかった。快適さを覚えた人間は、更なる満足を求めた。
《今よりもっとたくさんのものをてに入れたい。》
《もっと素晴らしい暮らしがしたい。》
そう考えた愚かな人間たちは略奪を始めた。
欲望はとどまることなく大きな略奪戦争を引き起こし、やがて世界中に広まった。
土地は荒れ、かつて保証されていた全てが失われ、人々は死の恐怖に焦燥しきっていた。それでも、人間は争うことを止めなかった。一度おとされた火蓋はもうもとには戻らなかった。
しかし、そんな状況のなかで、秩序を求める人々が集い始め、その集団が力を持ち、ついには一国を治めるまでとなった。もちろん、そのやり方は決して平和的なものではなく、力に任せたものであったが、むやみに人を殺さず、物を奪わないそのやり方に賛同する市民がほとんどであった。
それに加え、彼らは国を支配するためにある力をてに入れたのだ。それは古代に存在していた星や神と契約し、その力を借りることができる、といったとてつもなく強大なものだった。その後、各国で形成されたそれらの武力集団の間で小競り合いは絶えないものの、その力の下、世界にはまた仮初めの平和が訪れた。
その武力集団のことを、人々は畏敬の念をこめて、『神羅』と呼んだ。