8月25日 Mission is possible
前回:仕事して開店して何かを決意したようです。
突然だが皆さんは尾行調査と聞いてどのようなイメージが浮かぶだろうか?数メートル後ろから茶色のトレンチコートに身を包んで追いかける姿だろうか?はたまた段ボールに身を潜め追いかける姿だろうか?だが彼は思う。前者はまだしも後者を実際にやると不審者かただの羞恥プレイなのではないかと。まぁ前者も十分に変質者なので座布団の代わりにお縄を頂戴できるのだが。
では、相手の影に身を隠したり、動物に変身したりといった非現実的な方法以外に何かいいストーキ…もとい、尾行方法はないだろうか?彼は考えた。6分ほど考えたのちにある結論に至った。
「気配を消せば済むのではないでしょうか?」
そう、常人はおろか、特殊訓練を積んだ者や人ならざるものにすら察知されない位に希薄な存在になれば安心安全に後をつけられるのではないかと。
思い立ったが吉日。彼は即座に実行に移した。
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8月25日の早朝。4時頃から彼は調査対象者の自宅付近に佇んでいた。佇むとは言ってもバッチリ中を覗いているのだが。しかしどうやらここの家には人除けの結界が張ってあるようなので近づき過ぎないように心掛ける。何故なら彼は普通(・・)の人間なのだから。
朝6時ごろ。家の中から誰かが動く気配が感じられたので気取られないように中を窺う。動いているのは女性らしい。この家は子供二人に大人が一人。ならば彼女がバイト応募者であろう。どうやら朝食を作っているようだ。暫くして2つ、気配が増えた。あれが双子姉妹なのだろう。
そろって朝食をとった後はダラダラと団欒しているらしい。正直見ているほうは暇なのだが、これも人材を見極めるための必要経費である。しかしここまで存在を消していると口煩そうな奥様はおろか、カラスにまで相手にされないとは、彼自身満足いく反面、少し寂しいものがあったりするのだが。
そんなことを一人考えていると、動きがあったようだ。どうやら買い物に出かけるらしい。トレースしつつスーパーへ。何も買わないのは悪いのでドクター・○ッパーを数缶購入する。
「これが好きなんですよ。」
そんなことを内心呟きながらレジを通る。
スーパーを出た後はあちらこちら寄り道したりお弁当を食べているようだ。ふむ、実に子供の面倒見がいいようだ。そんなことを考えつつ、木陰に佇みド○ペを飲む。ド○ペは彼の血であり肉である、というのは流石に大袈裟だが、それくらいに好きなのだ。
誰に訴えるわけでもなくド○ペの素晴らしさを心の中で訴えているうちに、彼らはお昼寝に入ったようだ。それを眺めながら2本目のド○ペを開ける。
14時を過ぎたくらいに彼らは起き、家へと帰った。もちろん、お家に帰るまでが調査です。故に彼は彼らをつける。そこで調査を終えるつもりだったのだが、観察対象者が仕事を始めたようなのでその様子を窺う。中は詳しく見れないが、どうやら人形のようなものを弄っているらしい。細工師なのだろうか?
仕事が一区切りついたのか、夕食の準備を始めたらしきところで切り上げることにした。
「…いい面接ができそうですね。」
そう呟いた彼の姿は、夜の闇へと消えていった。
※この小説は「うろな企画」参加作品です。
パッセロ@大学受験突入さんより神影一葉さんとくるみるくをお借りしました。
最近更新がまちまちですいません。バイト云々の件が終わったらシャキシャキいける筈です←