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悠久の欠片  作者: 蓮城
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8月21日・挨拶まわり


前回:引っ越してきました。


高原青年が帰り、軽い食事をとった後に私は一晩かけて本の陳列を終わらせた。寝ないのは久しぶりだったが、やはり夜の方が体にはしっくりくる、うん。


業者に電話をかけ、足りなさそうな本などの配送を頼んでから、予め用意しておいた紙袋を持って商店街へ向かう。


まずは組合長に挨拶する為に肉屋へと足を運ぶ。店は既に開いており、店主に要件を伝えると中に通された。奥さんと思しき女性がお茶を出してくれた。ほうじ茶だろうか。芳ばしい香りが心地よい。


「昨日より、うろな町に引っ越して参りました皇悠夜と申します。詰まらないものですが、どうぞ。」


「あぁ、わざわざありがとう。私はここの店主兼組合長の田中伸二だ。改めて宜しく。」


「こちらこそ、新参者で不手際などあると思いますが何卒、宜しくお願い致します。」


電話で名前は聞いていたが、実際に会って話してみるとなかなか人柄が良さそうに見える。


「何も畏まらなくたっていいって!まぁ、商店街からはちと外れちまったけど、あんたも商店街の一員みたいなもんだから、困ったことがあったら何でも言ってくれよ?」


うん、電話口より元気なようだ。


「はい、ありがとうございます。」


「ところで今日はどうするんだい?」


「この後は他のお店にも挨拶周りをしてから、町役場で書類確認をするつもりです。時間があれば少し町を見て回ろうかと。」


「なるほどな。したら今度時間のあるときにまた来てくれ。そのときに組合の説明とかしたいから。」


「わかりました。」


「あぁ、後、開店は確か明後日でいいんだよな?」


「そうですね。」


「よし、そうしたら明後日の夜は空けといてくれ。商店街のみんなで歓迎会だ。これは組合長命令だ!」


私は彼の唐突な提案に苦笑しながら了承の意を伝え、店をでた。



その後、他の店々へも挨拶へ伺った。行く先々で仕事中にも関わらず中に挙げてくれる当たり、みんなフレンドリーで、すぐに私を受け入れてくれたようだ。


あちらこちらを回り、『ホビー高原』をでた後、最後に『奥田商店』を訪れた。どうやらここはお婆さんが1人で切り盛りしているらしい。


「すみません。昨日そこへ引っ越して来た皇といいます。」


「あぁ、お前さんが新しく来た人かい。小ぃさな商店街だけど、これから宜しく頼むさね。」


簡易な挨拶を済ませた後に最後の一つとなったお土産を手渡す。


「お口に合うかわかりませんが。」


「あんれま、こりゃ雷おこしでねぇか。ありがとうね。」


社交辞令かもしれないが、雷おこしは商店街の人々に悪い顔はされなかったようだ。『お土産人気No.1』を唄うだけある。そんなことを思いながら町のことを幾つか訊き、一度店に戻ることにした。


☆★☆★☆★☆★☆★


店に戻り別な紙袋と鞄を手に取り、今度は町役場へ向かう。どうやら地下鉄が役場近くまで繋がっているらしいので、乗ってみることにした。


実は地下鉄に今まで乗ったことがなかったので多少不安な所はあったが、他の人の真似をしたら何とかなった。どうやら普通の列車と対して変わらないようだ。


『南うろな』から乗り込み『町役場前』で降りる。出口から少し歩いた所に役場があった。役場前、という駅名の割には歩くような気がするが、それは置いておこう。


建物の中に入り窓口へ向かう。受付の男性は最初、書類を見せたときに海外から引っ越してきたことに驚き、慣れない英語で話してきたが、別段私が日本語に支障がないと判ると町の名所やオススメスポット、美味しい食事処を教えてくれた。確かにこの町は外国の人は少なさそうだから不慣れでも仕方がないか。名前は確か…さ…さか…堺、と言っただろうか。今度会ったら確認しよう。



☆★☆★☆★☆★☆★


お昼はもう過ぎていたが、特にすることもないので先ほど教えられた店の一つ『流星』に向かう。


道に迷いながらも、行く先々で道を教えてもらいながらどうにか店まで着くことができた。しかし歩くと思っていたよりも距離がある。近々自転車を買おう、そう思いながら店のドアを開ける。幸い営業中のようだ。


「いらっしゃいませ」


優しげな男性の声が聞こえる。声の主を見ると、若そうなイケメン店員がいた。彼がシェフだろうか?取りあえず席に座りメニューをみる。


「お客様は始めてですか?」


「そうですね。昨日越してきたばかりなので。商店街のすぐ側で古本屋を始めましたので、よければいらっしゃって下さい。」


「そうですか。昨日の今日でありがとうございます。お店には今度行かせて頂きますね。さて、ご注文は?」


いや、メニューは見てはいるのだが、正直どれも美味しそうで困る。


「では…カツ丼を。」


「すいませんウチ洋食屋なんです。」


冗談のつもりなのだが真顔で返された。やはり日本人のユーモアセンス、というのはいつの時代も難しい。


「…ではこのオムライスで。」


「畏まりました。」


少ししてから出てきたオムライスはとても美味しかった。また来よう。そう思いつつ店を後にした。






※この作品は『うろな町企画』参加作品です。


綺羅ケンイチ氏より葛西拓也、シュウ氏より高原直澄(名前だけ)と榊、YL氏より奥田のおばあさんをお借りしました。


榊は名前いじらせて頂きました(笑)


また、前回書き忘れましたが三衣千月氏より天狗仮面と傘次郎、零崎虚識氏より栃の木も前話でお借りしました。


何か不手際などあればジャンジャン言って下さい。



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