~第六章~ 問い
私は寝ていたようだ。
目を覚ますと初めて会った日のように、零が私をのぞきこんでいた。
「零…」
私はぼんやりとした意識の中で彼の名を呼んだ。
「もう…!約束してたのに寝ちゃってるんだもん。」
ほっぺを膨らませいつものように拗ねてみせる。
ああ…あの男の子は零だ。
そう、私は悟った。
でも、零はなぜ私より年下なのか。それが不思議でならない。
だって、私達は同い年だったはず。。
私は思い切り息を吸い、そして訪ねた。
「ねえ、零。聞きたい事が有るの。」
私の真面目な口調から、零の顔から笑顔は消え、真剣な顔になった。
「うん。なに?南海。」
零は言った。
「私ね、零のこともっと知りたいんだ。」
少し間をおいて続ける。
「零のこと…私。。」
“好き”
そう、好きなんだ。
自分でも今初めて気づいた。
この言葉が言えたらどれだけ楽だろう。
きっと、零に疑いを持ったりしなければ言えてたと思う。
言い逃れに過ぎないかもしれないけど。
でもそう思った。
「南海…?」
零が不安そうに訪ねてきた。
「ううん!なんでもない。」
この気持ちは保留にしておこう。
そして本題に移る事にした。
「零、私に何か隠している事とか…ない?」
うつむいて零はつぶやいた。
「何が…?」
それは、いつもより声が低く、怒っているようにも思える。
しかし、その反応は何かを隠している証拠にするには十分だった。
「私ね、子供の頃のこと、思い出したの。」
そういうと、零は顔をあげて驚いた様に私を見た。
そして、ほんのり笑った。
それは嬉しそうに。そして悲しそうに。
「そっか。」
そっか。
その言葉は、何かを諦めるかのようだった。
そして、覚悟を決めた様に私を見つめ、口を開いた。
「僕は―――」
私は零の次の言葉を待っていた。




