第1話
「これで最後になりそうだな……」
戦闘の開始前にぼそっと呟いた。
最前線に立つ僕の目の前には、大地を埋め尽くすほどの敵軍。
修羅になり果てた、僕の心は、いつしか死んでいしまった。
「ご苦労だったな、勇者よ」
僕をこの世界に召喚する命令を出した、この国の王は、高い所からモノを言ってくる。
この王は、僕を奴隷としか見ていない、生きる兵器として。
「相変わらず無口な奴だ。
次の戦いに備えて、休んでくれ」
「分かりました」
1週間振りに部屋に帰った、寝る場所以外に大きな窓がある他には何もない、殺風景な部屋だ。
「レイトさん!
怪我は、ありませんか?」
部屋にキレイな、青色の髪を持った少女が入ってきた。
彼女の名は、マリー、僕を召喚したこの国の最後の皇女。
「大丈夫だよ」
「よかったです。
レイトさんは、最後の希望ですからね」
僕だって、分かってる。
自分が都合のいい、道具だってことも、でもこの世界で自分の居場所を守るには、利用されていると分かっていても戦うしかなかった。
僕がこの世界に呼ばれた理由は、魔王を倒してほしいとのことだった。
魔王が人なのか、人ならざる者なのかは、誰も知らない。
ただ、魔物を生みだしていることしか分からない。
高濃度の魔力汚染がされている、地域は、魔物たちの巣窟になっている。
ただ最も性質の悪いのは、魔王軍側に寝返った国々があることだ。
信頼と結束は、乱れ。
人々は、バラバラになった。
残った各国が、それぞれで防衛線を張るが次々に国が陥落して行った。
この世界の大陸の9割が魔王軍に占拠されたとき、人々の希望そして、最終兵器として僕が呼ばれた。