09
「・・・・どういうことでしょう?殿下・・・・」
とろけるような笑顔を向けられているのに、目は笑っていない。
「あなたには申し訳ないことをしたと思ってますが、私の妃候補になっていただけませんか?」
「・・・そのお話はもう陛下にいたしました。ご存じなのでしょう?なぜ私なのでしょう?」
「・・・そうですね。理由をあえていうのなら、私に協力していただけるかと思ったからです」
「協力ですか・・・?」
「候補といえどある程度の祭事は関わってもらうことになります。ただのお飾りでは困るのですよ。そして、一番の理由が私と結婚をしたくないと思う人だからです」
殿下の笑顔は消え、真面目な顔になった。
「・・・もともと私は結婚などするつもりはない。それなのに、宰相どもがいつの間にか各国に招待状を出してしまっていて仕方なく候補を選ばなければいけなくなった。それだけでも迷惑なのに、私が選ばないと宰相達が妃という立場を望むような女性を選び後々邪魔な存在となる。だから、あの時妃になることに全く興味を示さないあなたがぴったりだと思ったのだ」
「・・・・宰相様方の息がかかっておらず、殿下の邪魔にならないように過ごす女性が必要であったと?」
「話が早くて助かるよ」
とろけるような笑顔の殿下はどこに行ったのか、今の殿下はまるで悪魔のようだ。
いや、悪魔だ。
「・・・今、ろくでもないことを考えなかったか?」
顔に出ていたのだろうか?
「滅相もございません」
心の中で位、悪態もつきたくなる。そんなことで私の自由は奪われてしまうのだ。それくらい許してほしい。
いや・・・奪われないようにすればいいのかもしれない。
「・・・殿下。私はあなたに協力をさせていただきます。そのかわり、と申し上げてはなんですが、私に城下へ下りる許可を頂けますか?」
「・・・・・なに!?あなたはまだ懲りてないのか?・・・・」
さらに眉間のしわが濃く刻まれて、冷たい視線を向けられた。
「・・・いえ。さすがに我が国のように行かないことはわかりました。ですから、こちらにご迷惑がかからないように、我が国より騎士を派遣し私が城下へ参りますときには必ずそのものをつけます。それでいかがでしょう?」
「・・・・いいだろう。だが、一度でも同じようなことがあれば二度と城下に下りることは許可しない。それでもいいな?」
「ええ!もちろんですわ!ありがとうございます!殿下」
少しの自由を得たアリアはとても喜んだ。
「あぁ・・・。それでは交渉成立ということでよろしいですね。これからよろしくお願いしますよ。アリア姫」
いつものとろけるような王子に戻った殿下は部屋を出て行こうと扉に手をかけた。
「レオン様!!助けて下さってありがとうございました」
最上級のお辞儀をし、先程のお礼をした。
彼は振り返ったが、すぐそのまま出ていってしまった。
しかし、振り返った彼の顔はとろけるような王子でもなく、冷たい視線をなげかけるでもなく、昨夜みた騎士レオン様の顔だった。
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部屋に戻ると、マリアが心配そうな顔で私に近づいてきた。
「アリア様!国王様のお話はなんだったのでしょう!?」
「・・・・えぇ。王子の妃候補になれとの事だったわ・・・・」
「まぁ!!!!どうしてその様な事に?昨夜は王子はいらっしゃらなかったのではないのですか?」
「そうね・・・『王子』は居なかったわ・・・・」
そして、マリアに昨夜あった事、先程の王子との話を全て話した。
「・・・・そうですの・・・。そんな事になっていらっしゃったのですね・・・。お可哀想に、アリア様」
「ふふ。仕方がないわ。なってしまったものはどうしようもないんですもの。それよりマリア、至急『彼』をこちらへ来るよう伝達して頂戴」
「かしこまりました。・・・しかし、『彼』が来て下さるでしょうか?」
「大丈夫よ。彼なら来てくれるわ。だってここには素晴らしい工芸品があるじゃない」
「あぁ!!そうですね!それがありました。では早速、国王様にご連絡し、彼の派遣許可をいただくよう手配してまいります」
マリアはいそいで部屋を後にした。
「・・・まぁ、イヤミの一つや二つは覚悟しなければならないかもしれないわね・・・」
その事を考えると、思わずため息が出てしまった。
読んで下さる方ありがとうございます。
まだ、話が長くなりそうですが、これからもよろしくお願いします<(_ _)>