殿下奮闘記3
ご、ご無沙汰しております。
内容を忘れかけておりましたので、おかしいなと思う点があればお教え下さい。
集まった重臣たちに偽の情報を流せば、なにやらほぼ全員が浮足立つような感じだ。
思わずその態度に眉を寄せそうになるが、毅然とした態度でその場を後にした。
しかし部屋に戻るといつも扉の前に立っている近衛に話しかけられた。
滅多にない出来事に何事かと眉をひそめると、なんと彼女の侍女から手紙を預かったと言う。
平然とそれを受け取ると、部屋に戻り早速封を切り手紙を読んだ。
「・・・・・くそっ!!俺がしてやれる事はこれだけしかないのか!?」
自分が今から書かなければいけない手紙の返事を思い浮かべ思わずそんな言葉がこぼれ落ちた。
彼女の心が軽くなる様にと思って始めた事だが、彼女の協力なくてはどうにもできない。
そして、それはもしかしたらさらに追い詰めることとなるかもしれなかった。
それでも、すぐに返事を書く為しぶしぶ机の前に座る。
ペンを走らせながらも、彼女の為に他に出来ることはないのか何度も考える。
それでもこれ以上の案は浮かばずしぶしぶそれを近くに居た騎士に渡すとアリアーデ姫へ至急届けるように申し渡した。
「・・・とにかく、俺は俺で彼女に罪をかぶせた奴を探しださなければ・・・・」
今してやれることなどそれだけだ。
少し落ち着いた俺は、机に溜まった書類に目を落としながら、まずはどうすればいいのかを考えていた。
「・・・・なぜ、アリアーデ姫に罪をかぶせなければいけなかったのか・・・・」
それは俺が、彼女を妃にすると言ったから・・。
考えながらも手元は別の書類に目を通しながら仕事をする。
「彼女が妃になって困るもの・・・・・」
他の候補者以外で誰が・・・・?
次から次に書類を片付けていけども、頭の中の答えはなかなか出てくれない。
そんな時、再びのんきな声が聞こえてきた。
「殿下。顔が怖いぜ?」
声のする方に視線をやると、いつの間に入って来ていたのか、入口にはルイガが立っていた。
「・・・・何の様だ?」
「ん?いやぁ、あの姫さんが庭に散歩に出るみたいだから知らせに来ただけだ。もしかしたら、そのまま図書室にでも行くかもな」
ルイガの報告に頭を抱えたくなる。
大人しくしてくれればいいものの、なぜかいつもうろうろとしているアリアーデ姫は自分が危険な立場だと解っているのだろうか?
「・・・ルイガ。今すぐ図書室に鍵をかけて来てくれ。彼女が入れない様に」
そういうとルイガは肩をすくめすぐに部屋を後にした。
「まったく・・・」
国に帰りたいと言うほど怯えているのに、なぜ外にでるのかわからない。
溜息をつきながら、ふと窓の外に目をやれば、噂の姫が侍女とともに外を歩いていた。
にこにこと笑顔を振りまきながら歩く彼女はまるで太陽の様だ。
なぜか目が離せないでいると、急に彼女の侍女が慌てて彼女を建物の陰にひっぱりこんだ。
ふと、彼女から目を外し、周りを見るとそこにはナーシャが侍女を伴って歩いて彼女の方へとやってきていた。
「あぁ・・・隠れた訳か・・・」
しばらくその様子を眺めていると彼女達はナーシャたちが去った後、図書室の方へ向かって歩き始めた。
「・・・ルイガの言ったとおりだな。鍵をかけさせておいて正解だった。はぁ・・・。部屋で大人しくしてくれていればいいものの・・・。こんなことだから誰かに狙われてしまうんだ。大体、あの侍女もなぜ止めない!自分の主が今どういう立場に立っているのか本当にわかっているのか!!」
彼女たちの後ろ姿に思わずそう言いたくなった。
だが、今は彼女たちを攻めている場合ではない。
とにかく、彼女を貶めようとしているものをもう一度一から洗い直そう。
そう思ったときに再び執務室の扉が開いた。
「危なかったぜ。もう少しで姫に見つかるところだった」
そう言いながらも飄々と執務室に入ってくるルイガに思わず睨み付けてしまった。
「・・・そんなに睨まなくても鍵はちゃんとかけたさ。図書室に入れなくって姫さん達も大人しく部屋に戻ったみたいだ」
その言葉を聞いて幾分か胸をなでおろす。
しかし、問題は一向に解決されたわけじゃない。
「ルイガ。アリアーデ姫の護衛はどこにいる?話がしたい。今すぐここに呼んできてくれ」
椅子に腰掛けようとするルイガにそう言うとルイガは目を丸くしてこちらを見てきた。
「・・・クレインとか言う奴か?殿下が他国の騎士を信じるなんて珍しいな」
先程までの驚いた表情はすでにそこになくニヤニヤとした顔に戻っていた。
「・・・彼女の身辺にいつでもいられるのはあいつだろう。仕方がないから協力を仰ぐ。今はアリアーデ姫の安全が第一だ。・・・分かったならさっさと行け」
「はいはい・・・。まったく人使いの荒い主だぜ」
ぶつくさ言いながらもルイガは再び部屋を後にした。
あいつに借りを作るのは釈然としないが、とにかくアリアーデ姫の側にいれて守れる者が必要だ。
護衛ならば護衛らしくしっかりとアリアーデ姫を守ってもらおうじゃないか。
そう思いながらも、なぜか胸の奥がもやもやしていた。
俺はそれを取り払うかのように、再びたまっている書類に目を通し始めた。
そして、気づいたら窓の外は暗く、星が光っていたことに思わずため息が溢れたことは仕方ないことだと思う。
部屋に明かりを灯すと、執務とは別に彼女がこれまで図書室で借りた本のリストを作り始める事にした。
「・・・こんなことで犯人が分かるとは思えないが・・・」
それでも、なにもやらないよりはマシだろうと数日かけて彼女の読んだ本を調べた。