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アリア奮闘記  作者: 羽月
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番外編 ブローチの謎 後編

「・・・・ルガー・・・・・・」


弟はちゃんと伝えてくれたんだろう。

今日はイルマの家にたずねると、すぐにイルマが出てきてくれた。


「・・・イルマ。少し外に行かないか?」


コクリと頷くと、俺はイルマを俺たちの思い出の公園へと連れ出した。


「ルガー、これで本当に最後にしてくれるのよね?」


困った顔をしてそう言うイルマに俺の心はつぶされそうだった。


「イルマ。騙してた事は本当に申し訳ないと思ってる。ごめん。俺の名前はアルバートなんだよ?前にも云っただろう?お願いだから、アルって呼んでくれないか?」


以前に名乗っていた名前で呼ばれる事に俺が悪いと解っていても悲しかった。


「・・・・アル」


「うん」


本当の名前を呼ばれた事で、少し気持ちが浮上した。


「イルマ。聞いてくれ。俺は3日後に婚約をしなければいけなくなった」


ピクリとイルマの肩が揺れたのがわかった。


「もちろん、俺の本意じゃない。親父が・・・国王が勝手に決めた婚約者だ。俺は今でも俺の妻にはイルマしかいないと思ってる!俺の心の中にはイルマしかいないんだ。イルマしか考えられない!」


そういうと、イルマが立ちあがった。


「なら!ならどうして始めから話してくれなかったの!?そしたら!・・・そしたら、始めから好きになんてならなかったのに・・・・・」


イルマの瞳に涙が浮かんでいた。

そんなイルマを抱きしめようと立ちあがってイルマの傍に寄ったがそれを拒まれてしまった。


「やめて!・・・婚約するんでしょう?おめでとう。私なんかが王子様の傍にいるなんてありえない事だったのよ。どうぞ、幸せになってください」


そう言って立ち去ろうとするイルマの腕をつかみ俺はイルマを引きとめた。


「待って!イルマ、聞いてくれ!これが最後のお願いだ!!」


必死で縋り付く俺はイルマから見てもみっともないだろう。

怪訝な顔をしたままイルマは止まってくれた。


「・・・お願いだ。俺は立場とか身分とか関係なく俺を見てほしい。それが難しい事もわかってる。だけど、イルマを好きな気持ちに偽りがあった事はない。いつも本気だった。王子だから俺とは一緒にいられない。王子だから私は相応しくない。そんな事言わないでくれ。俺は王子の前にアルバートという一人の男だ。イルマを好きになって情けない姿をさらしてる男なんだよ・・・・。本当に、本当に・・・・、俺が嫌いというなら仕方ないと思う。だけど・・・・、そうでないのならば俺の妻となってくれ。王子が嫌なのならば王子の座など捨ててどこかへ2人で行こう!いや、イルマの家族も一緒に!」


俺はさっき出来上がったばかりのブローチを取り出し、イルマの手に無理やり押し付けた。


「これは俺が初めて作ったイルマへのプレゼントだ。もし、YESならこれを着けて明日ここへ来てくれ。そうでないのなら、それは俺から君への最後のプレゼントとして受け取ってくれ」


願うように、気持ちが届くように今の気持ちをイルマに伝えた。


「・・・・わかったわ・・・・」


イルマはそういうとくるりと後ろを向いてその場を去って行ってしまった。

俺はイルマが見えなくなった後もしばらくその場に立ちすくんでしまった。


「・・・・無理だろうな・・・・」


もうすでに、結果は見えていた。

立ち去る前のイルマの表情は迷惑そうだった。

それでも、少しでも望みがあれば・・・・・。

そう思いながら、俺は城まで戻った。



次の日、イルマは来なかった。



「アル殿下。支度は整いましたか?」


「・・・あぁ」


これから婚約発表をする。

と言っても、正式なものでなくまずはお披露目という形だ。

我が国の貴族や上流階級のもの達に妃となる者の顔を覚えてもらうと言う様なものだった。


「・・・アル殿下。お気を落とさないでください」


昨日城に戻って来てからというもの、何もやる気が出ない。

そんな俺を見かねてか、口うるさい側近も昨日から気を使ってくれる。


「すまない。大丈夫だ。・・・さぁ、行こうか」


無理やり笑顔を作ってみるが、上手く出来ているかどうかわからない。

しかし、側近の顔を見る限り上手く出来ていないようだ。

溜息をつく側近に連れられて俺は会場となる広間へと向かった。


「え~、この度、我が息子の妻となる相手がきまった。お相手はリファール国第2王女フェリシア姫だ」


親父がそういうと、隣りに並んでいた女が何か挨拶みたいなものをしていた。

イルマとは正反対の女。

化粧が濃く、強気な感じが全く俺の好みではない。

だが、そんな事は関係ない。

きっと誰が隣りにならんだって俺の好みなんかじゃないんだ。

俺が好きなのはたった一人なんだから。

そんな事を考えていると、女の挨拶が終ったのか、会場が静まり返った。


「アル殿下、何かお言葉を」


潜んだ声で側近が俺に挨拶をと促す。

あぁ、俺も何かいわなければいけないのか・・・。

やる気はないが、一応王子として口を開こうと会場を見渡した時、入口の傍に立っていた女に目を見張った。

俺は無意識の内にその場から駈け出した。


まさか・・・・。

いるはずがない・・・・。


そんな想いとは裏腹に体はその女目掛けて必死で走っている。


まさか、王子がいきなり王座から下りてきて会場を走り回るとは誰も思っていなかったのだろう。

呆然と立ち尽くす貴族たちが邪魔でなかなか、目的の場所にたどりつけない。

それがもどかしく、その間に逃げられやしないかと不安だった。

だけど、入口の前に先程と変わらずそこに立っている女を見つけた時は思わず泣きそうになった。


「・・・・イルマ・・・・・」


困ったように、申し訳なさそうにそこに立っているイルマの胸には不格好なブローチが着けられていた。


「アル・・・。ごめんなさい。遅くなってしまって・・・・」


その声に、その言葉に思わず俺はイルマを抱きしめていた。


「イルマ。イルマ!!」


思い切り抱きしめる俺にイルマは苦しかったのか、俺の背中を何度か叩いた。


「ア、アル!ちょ、ちょっと苦しい!離して!!」


イルマの言葉にハッとした俺はイルマを俺の腕から解放してやった。

ただし、逃げられない様、手はしっかりと繋いで。


「・・・ずっと、心が決まらなかったの。こんなところに来るなんて恥知らずよね。やっぱり私なんてあなたに相応しくないかもしれない」


そういうイルマに俺は思い切り否定した。


「そんな事はない!!俺にはイルマしかいないんだ!!」


イルマはその言葉を聞いて驚いた様な表情をしたかと思うとクスりと笑った。


「うん。私も、やっぱりアルじゃないとダメみたい。許されるならば、アルと一緒にいたい!」


その言葉に俺は再びイルマを抱きしめた。


「許されようが許されないだろうが関係ない!俺はどんな事があってもイルマと一緒だ!!」


やっと、この手にイルマが戻ってきた。

二度とイルマを離さない。













「素敵!!」


まさか、そんな話があったなんて夢にも思わなかった。

少し、自分たちと似てるなって思いながらレオンの話を聞いた。


「それで!?それで、2人はどうなったの?」


問い詰めるようにレオンにせがむ私にレオンは呆れたように笑い、話を続けた。


「もちろん、2人は結ばれたよ。実はそのお披露目式は陛下が仕組んでいた、ただのお芝居だったんだ」










「親父!どういう事だ!!」


イルマを抱きしめたまま横で笑っている親父に俺は詰め寄った。


「ふぉふぉ!お前が情けないから、皆に協力してもらったんだ。婚約者が決まればお前も焦るかと思ってな」


開いた口がふさがらないとはこの事だろう。

まさか、このお披露目会全てが仕組まれていたなんて。


「こ、婚約者は・・・・・」


ふと、親父の隣りにいる女に目をやるとしてやったりと言う顔でこちらを見ていた。


「彼女は、たまたまこちらへ用事で訪ねてくる事があったので協力してもらったのじゃ。彼女にはれっきとした夫が既におる」


「ごめんなさいね。騙す様なことしてしまって。・・・国王様には昔お世話になったから恩返しのつもりで協力させてもらったの」


申し訳なさそうに謝っている王女だが、どこか楽しそうだった。


「・・・そんな・・・・」


ぼそりとつぶやく俺に、イルマが更にとどめを刺した。


「・・・・アルの家族ってみんな騙すのが好きなのね・・・・・」










「ふふふ。王子様もかわいそうに」


そんな落ちがあったなんて想像してなかった。


「まぁ、大体お披露目式なんてものはないんだ。勉強不足のその王子がアホだったんだろう」


レオンは呆れたようにそう言っているが・・・。


「でも、それって結局レオンのご先祖様なんでしょう?」


そういうとレオンも苦い顔をした。


「・・・・・それは言ってくれるな。そんなアホの血が流れてるとは思いたくない」


「ふふふ。でも、結婚した後はとても素晴らしい人だったのね。歴史書には偉業をなした国王として載っていたわ」


「あぁ。そうみたいだな。その妃を娶ってからはぐんぐん頭角を現して今の大きさまでフィルナリア国を拡大させた人物だ。そんな所は尊敬に値する」


そういうレオンはなんだか得意げだった。


「でも、昔のお話ってそういう事だったのね。なんだか少し似てるけど、私たちの時とはちょっと状況が違うわね」


「そうだな。あの時はお前に辛い思いをさせてすまなかった」


本当に申し訳なさそうに頭を下げるレオンに私はキスを一つ落とした。


「そんなことないわ。今がとっても幸せだもの」


そう言ってレオンの方に寄り添うと、うっかり変なスイッチを押したらしい。

レオンの目が怪しく光ったかと思うと、ベットへと押し倒されてしまった。


「今が幸せか?これから、更に幸せを増やして行こう」


そう言って、私の額にキスをするレオンに頷き言った。


「きっと、2人も幸せになったんでしょうね。そんな素敵なブローチを私に贈ってくれてありがとう」













ブローチのお話は以上です!


詳しいお話は別にUPしておりますので是非お時間がありましたらのぞいてみて下さい。



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