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最終話となります。
その瞬間、残されたナーシャが声を上げた。
「で、殿下!お戯れが過ぎますわ!貴方の婚約者はこの私ですわ!!もう決まった事ではありませんか!!」
いつの間にすぐ傍に来ていたのだろうか?
ナーシャはこちらに向かって歩いて来ていた。
「アリア姫!貴方!ご自分から候補を辞退したくせに図々しいのよ!貴方が来なければ!!」
掴みかかってこようとしていたナーシャと私との間に殿下がスッと立ちはだかり、ナーシャから私を守る様に私を背に隠した。
「なぜですの!!殿下!どうしてそのような小娘をお守りになさいますの!貴方の婚約者はこの私ですわ!!」
殿下を目の前にナーシャは殿下へと詰め寄った。
「・・・ナーシャ。この場にてこの様な事をしてしまってすまないと思っている」
ナーシャに向かって殿下は頭を下げた。
しかし、すぐに頭を上げると先程までとは違う空気を纏った殿下がそこに立っていた。
「しかし、貴方の様な者を婚約者として迎えるつもりは元々なかった」
その言葉に私を始め、会場中がざわめき立った。
「な、なんて事を!!ならば、このパーティーは何だと言うのですか!!」
殿下の言葉に青くなりながらナーシャは殿下を責める。
「・・・何だも何も、このパーティーの招待状を勝手に出したのは貴方でしょう?」
その言葉にナーシャはますます顔から血の気が引いて行った。
「ふ・・・。知らないとでも思っていたか?新しい宰相に取り入り招待状を出させたであろう?私が妃など誰でも良いと言った事をいい事に、勝手に各国へ招待状を送らせておいてなんなのかはないだろう」
傍にいた宰相をちらりと見るとそちらも真っ青な顔をしていた。
「全く情けない。私が何も知らないと思っていたのか?別に妃など誰でも良かった。なりたければならせてやろうと放っておいたが、宰相とも通じておるような女と結婚などする気にもなれん。宰相、ナーシャはお前に下げ渡す。好きにするがいい。そして、宰相の任を今この瞬間より解く。今すぐその者を連れてこの場から出ていけ!!」
殿下の言葉に宰相は膝をつき頷くと、うなだれるようにその場を後にした。
その場に残されたナーシャはこちらを睨み続けたまま近衛に連れられ会場を出て行った。
「・・・アリア姫」
その光景を呆然と見ていた私に優しく殿下が声をかけてきた。
「すまない。一時でも違う女を妃に据えようとした。私を許してくれ」
頭を下げる殿下に私は慌てて手を振った。
「い、いいえ!!構いません!殿下はこの国を想ってお選びになったのです。それに・・・・、私では本当に不釣り合いです・・・」
「何を言うか!貴方が不釣り合いと言うのであればそれは私の方だ。・・・・そのブローチを渡した時、私は願ったのだ。貴方が自ら私の元へ戻ってくる事を・・・」
ふと目をそらす殿下。
「情けないだろう?貴方から私を求めてくる事を願っていたのだ。・・・だが、本当にこうして私の手の中にブローチとともに戻ってくるとは思わなかったがな」
にやりと笑うと殿下は私をひょいっと抱きかかえ、また王座へと戻り始めた。
「で、でんか!!」
慌てて下りようとするが殿下の力は強くしっかりと抱かれている。
「暴れるな。もう覚悟をしろ。私の求婚を受けたのだ。この国の妃に相応しいのは貴方だけだ」
殿下の腕の中から見上げる殿下の顔はとても優しくにっこりと笑っていた。
「これからは2人でこの国を守ろう。貴方とならこの国は素晴らしい国になるだろう」
そういうとストンと私を下ろした。
「お集まり頂いた皆様。お見苦しい所をお見せいたしましたが、改めてご紹介いたします!私の妻となりこの国を共に支えてくれる婚約者のアリアーデ姫です!」
会場中から暖かい拍手が送られる。
「アリア・・・。こんな私だが、これからの人生共に歩んでくれ」
そっと私の手を取り、殿下は笑う。
その顔に、その手のぬくもりに涙があふれる。
「はい・・・。はい!」
こぼれ落ちる私の言葉。
叶わないと思った私の想い。
今、繋がれる手のぬくもりを決して離さないと誓い私は殿下の傍に寄り添った。
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「おい、聞いたか!?」
ある町の食堂で一人の男が話始める。
「あぁ!聞いたぜ。あれだろう?」
「そうそう!」
「いやぁ、この国大丈夫か?」
「まったくだ。やっぱりあの完璧王子・・・いや、完璧陛下だと妃様も大変なんだろうな」
「そりゃ違いねぇ!!」
食堂で繰り広げられる話・・・・。
そこに一人の女性が現れた。
「あら?何のお話?私も混ぜてもらえる?」
にっこりと笑う女はそこに腰かけると肘をついて話を聞き始めた。
「嬢ちゃん知らねえのか?結構有名な話だぜ?」
「この国の一大事だぜ?」
「なぁに?どんな話?」
興味津々に聞く女に男たちは顔を見合わせたかと思うと勢いよくその話を始めた。
「いやぁ!この国の王様に嫌気がさして優しいお妃様が家出を繰り返す話さ!」
「そうそう!しかも結構な頻度で家出を繰り返すもんだからもうすぐ離婚するんじゃねぇかって話だぜ?!」
その話にその女は思わず噴き出す。
「ぷ!!そんな話があるの?知らなかったわ!!」
「おいおい、嬢ちゃん!笑い事じゃねぇんだよ。あのお妃様がきて俺ら下々の者も色々暮らしが豊かになったってのに、お妃さまに逃げられちゃたまんねぇんだ!」
くすくすと笑う女が深呼吸すると男たちを見て言った。
「大丈夫よ!きっとお妃様は陛下のお傍を離れないわ」
にっこりと笑う女に男たちは首をかしげる。
「・・なんで、そんな事が嬢ちゃんにわかるんだ?」
男たちが問う事にふふふと笑うだけの女。
すると女の後ろから低い威圧感のある声が聞こえた。
「・・・ほらみろ。お前のせいでそんな噂が立っているじゃないか」
呆れたように溜息をつきながらにゅっと現れた男。
「あら?もう見つかっちゃた。お兄さん達、面白い話をありがとう!」
そういうと、女はその男に寄り添うと共に食堂を出て行った。
残された男2人の表情は驚いた顔のまま固まっていた。
「・・・・・・・・王さまぁぁぁあああ!?」
長い間お付き合いくださいましてありがとうございます!
初めての小説にこんなにたくさんの方が目を通してくれたかと思うと、ありがたい気持ちとともになんだか恥ずかしい気も致します。
稚拙な文章で皆さまに不快な思いをさせた事もあると思いますが、この小説を読んで下さり、感想を頂いた事で私も最後まで書きあげる事ができました!
後日、また番外編などを書いていこうと思いますので『完結』とはせずに、時間があるときにまたUPしていきたいと思います。
その後の2人の様子や殿下視点などかけたらいいなと思っていますので、今後もお時間がありましたら、ぜひのぞいてみて下さい!
ここまで読んで下さった皆様、応援して下さった皆様、本当にありがとうございました。




