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またこの地に足を踏み入れるとは思わなかった。
「・・・着きましたね・・・・」
決して笑顔とは言えない顔で私たちは城を見上げた。
城下を通る馬車は町の喧騒を潜りながら進む。
さすがに王子の婚約とあって町の賑わいもいつも以上に盛り上がっていた。
「・・・アリア様・・。大丈夫ですか?」
心配そうにのぞくマリア。
馬車での旅は2週間に渡るものだった。
その間に私の気持ちをマリアに話した。
「大丈夫よ。心配しないで」
にっこりとマリアに笑いかけるがマリアの表情は一向に緩まなかった。
そんなマリアに苦笑しながらも私はここまで来る間に考えていた事をマリアに打ち明けた。
「マリア。お願いがあるの・・・・・・」
マリアにその話をすると目を大きく開いたかと思うとぽろぽろと涙を流し始めてしまった。
「・・・っ!アリア様!お任せ下さい!必ず!私がマリア様の願いを叶えて差し上げますわ!!」
私の両手をとるとしっかりと握りしめマリアがそう言った。
その言葉に安堵し、ほっと胸をなでおろした。
もしかしたら、反対されるかと思ったから・・・。
こんな事は本当であれば許されないのだろうから・・・・。
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「アリア様・・・お綺麗ですわ・・・・」
ほぅっと息をつくマリア。
すぐに城に到着した後、ご挨拶に伺おうと思ったのだがあまりの招待客の多さに挨拶は必要ないと案内された侍女に言われてしまった。
結局、殿下とお会いする事は今日のパーティーまでお会いする事は出来なかった。
「いよいよですね」
鏡越しに映るマリア。
「・・・そうね。本当はパーティーの前にお話しできたら良かったのだけれど・・・・」
「仕方がありませんわ・・・。やはり大国王子の婚約とあっては招待客の数も我が国とは比較になりませんからね・・・・」
「そうね・・・・」
招待された客の数は数万人。やはり他国との繋がりも多くいちいちその方々一人一人に挨拶をする事はかなわないのだろう。
だけど・・・・
「今日のパーティーでは必ず殿下にご挨拶しなくてはなりませんね!」
私の想いが声になって出てきたのかと思った。
「・・・さすが、マリアね・・・」
くすりと笑う私に、マリアは何の事かわからず首をかしげていた。
「ふふ・・・。マリア」
マリアのほうに向きなおるとしっかりとマリアを見据えた。
「綺麗にしてくれてありがとう。私のわがままを聞いてくれてありがとう!」
マリアの両手をとってしっかりと握った。
「いいえ!!これが私の仕事です!それに・・・・アリア様のお願いを聞かない訳にはいきませんからね!」
片目を瞑るマリア。
「ふふ・・・。これで、最後にするわ!そして、国に戻ったらもっと素敵な方を見つけましょう!」
「もちろんです!私も、素敵な方を見つけますわ!あ!でも、アリア様の傍についててもいいっていう殿方はいらっしゃるかしら?」
にこにこ笑っていたかと思うと、急に困ったような顔をしているマリアを見ると無意識に頬が緩む。
そして、もう一度鏡に映る自分の姿を確認すると、気合いを入れた。
「さぁ、もうパーティーは始っているわ。これから、しっかりと最後の決着をつけてくるわね!」
マリアの方を振り向きにっこりと笑う。
マリアも同じようにこちらを見据えた。
「・・・・アリア様。いってらっしゃいませ!」
マリアは扉を開けると会場までの道を一緒に歩いた。
会場の扉の前に来るとマリアに視線を移した。
マリアもコクリと頷くとその扉を開け先を促した----。