表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリア奮闘記  作者: 羽月
56/80

56

「・・・・リーナ様?」


下を向いたままのリーナに呼びかけた。

すると、その声に反応してかふと顔を上げた。


「・・・アリア様。本当に私を許していただけるのですか?」


再び泣きそうな顔をしたリーナににっこりと笑いかける。


「もちろんですわ。先程も申し上げましたでしょう?リーナ様は本当の事を話して下さってちゃんと謝って下さいました。罪を認めた方を怒る必要はないと思いますが?」


「・・・・いいえ・・・。それでも・・・・・」


また下を向くリーナ。

困ったと思いながら溜息をつくとふといい事を思いついた。


「そうですね・・・。リーナ様がそれほど私に罪悪感を感じていらっしゃるのなら私の言う事を一つ聞いてもらいましょう」


再び顔を上げたリーナは今度は不安そうな顔をしていた。

その百面相がとてもおもしろい。


「ふふ。よいですか?必ず聞いて下さいますね?」


少し真面目な顔をして言うとリーナは弱弱しく返事をした。


「・・・はい」


「では・・・・・。今後、私の事を裏切るような事はされないで私とずっとお友達でいて下さい」


にっこりと笑うと、リーナは驚いたような顔をして大きな目から再びぽろぽろと涙を流した。


「・・・リーナ様、お返事は頂けないのでしょうか?」


優しく問う私にリーナは頷く。


「はい・・・。はい!」


「ふふ。じゃぁこれで今までの事は水に流しましょうね!」


一度はなくしかけた友達だった。

しかし、やはり私の目は間違っていなかった。

こんな素直で心やさしい人。

そんな人を利用しようとするなど本当に許せない。

しっかりと殿下が処罰をしてくれる事を望んだ。


「・・・リーナ様?もう泣かないで?さぁ、新しくお茶を入れてもらいましょう?」


リーナの傍を離れマリアを呼び、新しくお茶を入れた。

その間もリーナは泣きやまなかったが、暖かいお茶を飲むと少し落ち着いた。

これまでの事をもう一度謝って下さり、今までで一番素敵な笑顔とともにこれからもよろしくお願いしますと言う言葉を置いてご自分の部屋へと戻られた。



************************


それから、数日の間にフィルナリア国の重臣たちが総入れ替えになった。

殿下がおっしゃった通り、殿下自身が直接宰相へと処罰を決めそれを下した。

その処罰は、爵位の剥奪、荒れた土地にへ行きそこに農地を作れと言う事。

どうやら殿下は今まで横流しした食料分を自分で作れと言う事を言ったらしい。

確かに、自分で作ればどれだけ大変かがわかるだろう。

しかし、横流しした量を作ろうと思えば宰相の代だけでは終わらない事だろう。


「・・・殿下もなかなかの事をお考えになるのね・・・・」


今回の事にケリがつき戻ってきたクレインがその事を報告した。


「・・・アリア様よりはマシかと思いますがね」


「あら?クレインは私だったらどんな処罰をすると思うの?」


「そうですね・・・・」


クレインは少し考えると、にやりと笑って答えた。


「まずは、リフィル国への謝罪でしょう?」


「それは当然ね」


悪い事をしたのならば謝るのは当然の事だ。


「それから、リフィル国再建の為の資金として宰相の財産の取り上げ」


「うん・・・。それくらいしてもらわないとね」


「そして、殿下と同じように農業をさせるでしょうね」


む・・・・。

やはり、クレインにはなんでもお見通しなのだろうか?


「いやぁ。殿下が荒れ地に行けと言ったときは思わず笑ってしまいました。アリア様と同じような思考をされていると」


「・・・当然よ。自分のした事を反省させるためにはどれだけ大変なのかをわからせないと反省なんてしないもの!」


ちょっと膨れたように顔をそむけた。


「・・・・しかし、これで全てこの件の決着はつきましたね。どうされるのですか?」


「どうするって?」


クレインが何を言っているのかわからなかった。


「・・・正式に候補を辞退して国に戻られるのですかっていう事ですよ」


そうだった。

私は国に帰る為に頑張っていたのだ。

だけど、どうしてだろう。

今は別に国に帰りたいとは思っていない。


「・・・・殿下にはそう言っているわ。きっと今頃国に戻れるように手配してくれているのではないかしら」


そう。あれだけ私は懇願したのだ。

そして、殿下もそれを了承し、この件が終わったら国に返してやると言った。

殿下の妃候補なんてと思っていたけど・・・・。


「・・・本当にそんな手配しているんでしょうかねぇ?実はもんもんと悩んでいたり・・・」


ポツリとクレインは言葉を発していたのだが、私にはそれは聞こえていなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ