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しばらくその場が静まりかえっていた中、殿下が溜息をついた。
「・・・つまりは全て宰相が黒幕と言う訳か・・・・。しかし、リーナ。お前のやった事も無罪放免と言う訳にはいかない。わかっているな?」
淡々と話す殿下の言葉にリーナも頷いた。
「・・・もちろんです・・・。でも・・・・、我が国の民には何の落ち度もありません!だから・・・」
それ以上の事は言葉に出せなかったようだ。
「・・・・わかっている。リフィル国への援助はさせてもらう。こちらに非がないわけでもないからな」
その言葉を聞くとリーナは安心した様に胸をなでおろした。
それにしてもこんな民を想っているリーナを脅すなど言語道断だ。
私は怒りで手が震えた。
「殿下!宰相様をどうされるおつもりですか!!リーナ様にこんなひどい仕打ちをして私許せません!!」
今にも殿下に掴みかかる勢いで席を立ちあがった。
「・・・アリア様・・・・・」
リーナは自分の為に怒っていると解って目に涙をためていた。
そんなリーナの様子をみて私はリーナの手を取った。
「リーナ様・・・。事情を知らなかったとはいえ、ひどい事を言ってしまってごめんなさい」
「・・・いいえ!・・・私の方こそひどい事をしてしまって・・・・」
リーナの目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
「・・・・いいんです。私でも民の為でしたらきっと同じ事をしていたでしょうから・・・・。リーナ様?これからも私とお友達でいて下さいますか?」
私の言葉にリーナは吃驚したように顔を上げる。
私はリーナに向かってにっこりと笑い口を開いた。
「・・・・私ここにきて本当にリーナ様の明るさに助けて頂いたんです。それとも、やはり私とは仲良くして頂けませんか?」
リーナは首がとれるのではないかと思うくらい首を横に振った。
「いいえ!!そんな!!・・・・・私はあなたにひどい事をしたんですよ?・・・許していただけるんですか?」
だんだんと弱まる声に更に笑顔を向けた。
「許すも許さないもリーナ様は本当の事を話して下さいました。それだけで十分です。それに、悪いのは宰相様ですわ!私許せないのは宰相様です!」
自分で言いながらどんどん宰相に対して腹が立ってきた。
「人をなんだと思っているのでしょう!欲にまみれて民を想う気持ちを利用するなど絶対許せませんわ!!」
そういうと私は殿下の方へ向き直りキッと睨みつける。
「殿下!!きっちり宰相様を罰して下さい!!生ぬるい方法でしたら私許しませんから!!」
どんとテーブルを叩きつける私に殿下もリーナも目を丸くしていた。
「・・・アリア様。落ち着いて下さい。お2人とも驚いておいでですよ・・・」
呆れたようにクレインが私を窘めた。
その言葉にハッとして、顔を赤くしながら元の席へと戻った。
「・・・アリアーデ姫の気持ちもわかるが、これはこちらの問題だ。宰相の処罰については私がしっかりと考える」
殿下もクレインの言葉で自分を立て直し、こちらを見てそう告げた。
「・・・そうですわね・・・・・。出すぎた真似をして申し訳ありません」
一体、この言葉も何度目だろう。
殿下も呆れられているだろう・・・・。
「いや、それにしても・・・・・。っくっく・・・・」
ふと顔を上げると殿下が笑っていた。
「・・・殿下?」
「い、いや。すまない。貴方は気性が激しいと思っていたがここまでとは・・・・っくく」
つまり、感情のままに動く私が笑われていたのか。
「・・・・申し訳ありません。ついつい思った事がすぐに表にでてしまうもので」
いけないと解っていながらもどうにも止められる事が出来ない。
「いや。謝る事ではない」
殿下は息を着くといつもの表情に戻った。
「・・・後の宰相の事は私の方に任せて欲しい。アリアーデ姫・・・。貴方はもう少しご自分の立場を考えて気をつけて頂きたい」
そういうと殿下は席を立った。
「お茶をごちそうさま。では、早速私は宰相の事を取りかかるとしよう。・・・・アリアーデ姫、その間クレインをお借りしても宜しいかな?」
殿下がクレインの方を見るので私もつられてクレインを見た。
するとクレインは困ったように笑いながらも私に頷いて見せた。
「・・・えぇ。構いませんわ。どうやらクレインも殿下のお手伝いがしたいようなので」
もう一度クレインを見ると余計な事を言うなとでもいうような目をしてこちらを見ていた。
「そうか。助かる。ではクレイン一緒に来てくれ」
「・・・はい」
上手くやっていけるのかどうか少し不安に思ったが、私の知らない間に2人でつるんでいたくらいだ。
大丈夫だろうと思いながら2人を見送った。
部屋には、私とリーナ様2人が残って・・・・。